あらためて実感するイニエスタのすごさ。「後の先をとる」感覚と得点力 (4ページ目)
そのインテリジェンスが、イニエスタの本質である。
しかしながら、うまさ、だけで彼の真実は語れない。
「私が持っていない能力を、アンドレスは持っている」
バルサの選手、監督として功績を残したジョゼップ・グアルディオラは、いみじくもイニエスタについてそう語っていた。
「自分はバルサのMFとして、チームを機能させるためにダイレクトパスを磨き、ポジショニングを学習し、試合の流れを見る目を養った。しかし、私はゴール数がとても少なかった。(ヨハン・)クライフが監督の時には求められたこともあったが、得点能力は伸びないまま現役を終えた。ところが、アンドレスは14、5歳でゴールする能力も身につけていた。だから、私はサイドでも、トップ下でも彼を起用することにしたんだ」
イニエスタは、自らのゴールに対するナルシズムが少しもない。だからこそ、基本的には効率性を重んじ、有力なストライカーたちを操った。しかし、どうしてもチームにゴールが求められる緊迫した瞬間、彼は秘めたゴールセンスを解き放っているのだ。
例えば、2008-09シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ準決勝、宿敵のチェルシーとのセカンドレグで、バルサはジョゼ・モウリーニョが編み出した堅守に喘いでいた。ほとんどシュートを打てない状況だったが、そこでイニエスタは本性を見せる。終了間際、リオネル・メッシからのパスをエリア外で受けると、線を引くようなミドルシュートで決勝点を決めた。その一撃は、今も語り草である(勝ち進んだ決勝では、エトーの得点をアシストし、戴冠に貢献した)。
ゴール数は多くないが、チームが必要な場面で実は得点を決めている。
スペイン代表でも、それは変わらない。10年南アフリカワールドカップ決勝のオランダ戦、チームは苦境だった。延長後半、イニエスタは中盤で自らテンポをつくる。そして最前線にポジションを取ってパスを呼び込むと、右足で決勝点を叩き込んだ。
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