2020.11.02

あらためて実感するイニエスタのすごさ。「後の先をとる」感覚と得点力

  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 Jリーグも終盤戦に入り、川崎フロンターレの優勝は濃厚な状況。2位以下の激しい争いも面白いところだが、もう一つ、選手個々のプレーで、この人のチェックを忘れないでおきたい。毎試合、見る者を唸らせつづけている、アンドレス・イニエスタだ。今回は、あらためてそのプレーのすごさ、注目ポイントを、ふたりのライターに解説してもらった。

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究極の後出しジャンケン
西部謙司(サッカーライター)

 アンドレス・イニエスタは、シャビ・エルナンデス、リオネル・メッシと並ぶ、バルセロナのカンテラが生み出した最高傑作のひとりだ。三者三様の個性だが、イニエスタに感じるのは「老成」である。

毎試合、さすがのプレーを見せるイニエスタに改めて注目だ 孔子の言葉に「七十にして心の欲するところに従いて矩をこえず」がある。欲望のままに行動しても人の道に外れることがないという意味だ。十有五(15歳)で「志学」、学問に志を立てた孔子が、30歳の「而立」、40歳の「不惑」、50歳の「知命」、60歳の「耳順」を経て、70歳で達した境地だ。

 イニエスタのプレーはまさにこれで、バルセロナで叩き込まれたセオリーが完全に体に入っていて、自由にプレーして全部理にかなっている。

 イニエスタのプレーは大きく3つに分けられる。①ずらす、②いなす、③引きつける、この3つ。そして、自ら仕掛けるよりも、相手を見て逆をついていく。いわゆる剣道などの武術で言うところの「後の先をとる」やり方。達人感が強いのはそのせいだろう。

 パスを受ける時に相手の正面に立たない。真っ直ぐ寄せられる場所から、自分のポジションを「ずらす」。つまり、パスを受けた時に自分の前に人がいない。障害物がないのでパス、ドリブルなど次のプレーがスムーズにできる。

 足下にピタリとボールを止め、つっこんでくる相手と入れ替わるように持ち出していくプレーがよく見られるが、これも最初の立ち位置が相手のプレッシャーラインからずれているからだ。ボールを止めて相手を観察、つっこんできても自分の前方は空いているので真っ直ぐ持ち出しても引っかからない。