川崎Fが大卒選手を積極獲得する理由。強化担当が明かす3つのポイント (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「後発であるフロンターレが、川崎という地域に根付いていくことを考えても、長くフロンターレでプレーしてもらえる選手、将来を任せられるような選手を獲得したいと考えたんです。そうした意味では、大学生は一つポイントになるなと。何より、大学4年間で選手は人としても大きく成長しますからね」

 1つ目のポイントは「長く」という言葉だ。

「ユースや高校からプロになるような選手は、スーパーな能力を持っていると思うんです。そうした選手がたくさんチームにいるのはいいことかもしれませんが、まだ実績のないクラブが獲得することは容易なことではない。若くしてプロになるような選手は当然、海外指向も持っている。大学生だから海外に行かないというわけではないですが、僕自身はフロンターレのスカウトなので、高校生をたくさん獲ってきて、海外に移籍されても困りますからね。その意味では、大学からプロになった選手のほうがチームに腰を下ろしてプレーしてくれるかなと思いました」

 向島がスカウトになった時、頭角を現していたのが中村憲剛だった。中央大学から03年に加入した中村は、川崎で着実に経験を積み、存在感を発揮しはじめていた。

「中村憲剛の存在は、大学出身でクラブの象徴であり、一つポイントになっていると思います。その後、入ってきてくれた小林も含めてですけど、フロンターレにはどんな選手が合っているのかという意味では、僕自身もイメージしやすくなりました。高校時代無名の存在であったとしても、大学4年間で選手はプレー面で大きく成長し、人としても安定感が出てくるので、フロンターレのサッカーに合うかどうか、見る方としてもジャッジがしやすくなるところもあります」

 当然ながら年齢を重ねれば、選手としては完成されてくる。高校生よりも大学生のほうが、見極めやすいと言えるだろう。向島は「選手が若いうちから見極める力があればいいんですけどね」と謙遜するが、そんなことはない。今やクラブ歴代最多得点を誇るFWへと成長した小林に声を掛けたのは、ほかでもない向島である。関東大学2部リーグの拓殖大学でプレーしていた小林を、1年生の時から定点観測していた。

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