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「天国か地獄か」がないJ1後半戦。
監督解任もなく緊迫感も薄らいでいる (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 しかし、開幕5連敗といきなりつまずくと、第11節からは7連敗を喫し、第18節からはまたしても5連敗。特殊なスタイルを求める以上、ポステコグルー体制1年目の横浜FMのように、戦術浸透には時間がかかると予想されたが、シーズン半ばを過ぎても光明を見出すことができないでいる。

 継続性、という部分にも疑問符がつく。

 当初は4−3−3の布陣による攻撃スタイルに向かっていたが、失点が減らずに結果が出ない状況が続くなか、9月16日に行なわれた第24節の横浜FM戦から3バックに変更。実質5バックとも言える守備的なシステムへと移行したものの、成果は表れていない。

 結果が出ない状況下でもスタイルを貫くか否かは、難しい判断だろう。たとえ降格がなくとも、勝ってファンを喜ばせることが、プロとしての務めであるからだ。もっとも、この方向転換が状況を悪化させている事実も否定できない。キャプテンを務める金子翔太は言う。

「開幕当初から4−3−3でスタートして、そういう形での練習や試合を通して割と固まっていましたが、結果が出ずに5−3−2にトライしているなかで、まだ攻守に形を見いだせていない。いい場面もありますが、意図的に作っているかと言ったらそうではなくて、個人個人のスキルでどうにかしようとするシーンが続いている」

 培ってきたものを一度崩し、新たな道を模索するも、構築するには時間が足りない。今の清水からは、そんな混乱が感じられるのだ。

 ボール支配の意欲は高く、ポテンシャルを秘めた若手も台頭し、外国籍選手の質も決して低くない。十分に戦える戦力を備えていながら、その方向性がブレてしまったら、チームは前に進むことはできないだろう。

 降格がない状況は、一方でクラブとしての決断を難しくする。これは清水だけの問題ではないだろう。何を目的とし、どこにベクトルを向けるのか。成績に左右されないシーズンだからこそ、明確な指針を持つことがクラブの未来を明るく照らすはずだ。

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