施されたら施し返す。浦和育ちの23歳が「恩返し」で横浜FCの完全勝利

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

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 埼玉スタジアムでの浦和レッズvs横浜FCと言えば、2007年の開幕戦が思い出される。

 初めてJ1に昇格したチームが、前年王者に挑んだ一戦。その構図を考えれば、とうてい横浜FCに勝機はないように思われた。実際に25分にオウンゴールで先制された時には、「これは何点取られてしまうんだろう」と心配になったほどだ。

古巣レッズ相手に2ゴールを決めた23歳の松尾佑介古巣レッズ相手に2ゴールを決めた23歳の松尾佑介 ところが、前半終了間際に衝撃のゴールが生まれる。

 ペナルティエリアまでだいぶ距離があるというのに、サイドから中に切れ込んだ久保竜彦が、迷うことなく左足を一閃。空気を切り裂くようにぐんぐんと伸びたボールが、瞬く間にネットに突き刺さったのだ。

 直後の"ひょっとこパフォーマンス"も含め、規格外のストライカーと言われた久保の伝説のゴールとして、今も語り草となっている一撃である。

 もっともこのゴールで一瞬、空気は変わったが、それでも横浜FCが勝つことはイメージしづらかった。後半も健闘を見せたものの、終了間際に永井雄一郎にゴールを浴び、1−2の敗戦に終わっている。

 スコア上では追い詰めたように見えるが、実際はそうではない。なりふり構わずパンチを繰り出す挑戦者を、最後に本気を出した王者が軽くあしらった。ひと言で言えば、そんな試合だった。

 無理もない。当時の浦和にはワシントン、ポンテ、小野伸二、阿部勇樹、坪井慶介らがピッチに立ち、その試合には出場していなかったが、田中マルクス闘莉王、長谷部誠ら当時の日本代表が主軸をなしていた。

 一方の横浜FCでは、久保のほか奥大介、山口素弘、小村徳男がスタメンに名を連ね、三浦知良もベンチに入っていたが、いずれも"元"日本代表である。その他のメンバーもJ1の経験に乏しい選手たちがほとんどで、戦力差は歴然だった。

 実際にこの年、横浜FCは早々とJ2に戻ることが決定。一方、浦和はACLを制し、リーグ戦でも終盤に失速するまで圧倒的な強さを誇っていた。

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