2020.09.27

イニエスタの神パスが隠す神戸の問題。
監督交代劇が起こす継続性のなさ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

◆「消えていった天才Jリーガーたち」>>

 ヴィッセル神戸を語るとき、アンドレス・イニエスタについてばかり書くべきではない。

 勝利は選手全員の力でもぎ取るものだろう。実際、北海道コンサドーレ札幌戦でも古橋亨梧は卓抜としたスピードと決定力を見せつけ、終盤に入った19歳のルーキー、小田裕太郎は血気盛んにボールを追いかけ、冷静にゴールを決めた。4-0という勝利は、紛れもなくチームのものだ。

 しかしながら、イニエスタの存在は神戸というよりも、Jリーグ全体にとってさえも、あまりに巨大である。ほとんど彼ひとりで勝負を決めてしまう。別格なのだ。

 三浦淳寛新監督がどのような采配を振るのか。その監督デビュー戦で、イニエスタがご祝儀を送った。それがこの夜の真実だった。

ホームでの大勝に、ホッとした表情のアントレス・イニエスタらヴィッセル神戸イレブン 9月26日、ノエビアスタジアム神戸。神戸は本拠地に札幌を迎えている。トルステン・フィンク監督が退任し、マルコス・ビベスコーチが暫定監督として率いてサガン鳥栖戦に勝利した後、三浦監督が就任。またしてもシーズン中での監督交代になったわけで、どんな理由にせよ、それはポジティブなことではない。

 そして若手主体のメンバー構成になった札幌を相手に、神戸は序盤、ほとんど攻撃が作れず、守備は簡単にラインを突破されていた。相手FWに反転されて大崎玲央が入れ替わられ、後手に回ったトーマス・フェルマーレンのタックルもファウルに見えたが、あわやの決定機に笛は鳴っていない。チームとしての動きがチグハグで、個人任せ。得点よりも失点の予感が漂った。

「我々がやりたいサッカーという点では、満足はいっていません。そこは正直なところです」(神戸・三浦監督)

 その流れを、イニエスタが一変させた。

 15分、左サイドに流れたイニエスタは、タッチラインで相手をダブルダッチのドリブルで抜き去る。左足でドウグラスに折り返し、落としたボールを安井拓也がシュートするが、惜しくもブロックされた。得点には至らなかったが、これを契機にチームはペースを握る。古橋のシュートなど、敵を押し込むようになった。