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イニエスタの神パスが隠す神戸の問題。
監督交代劇が起こす継続性のなさ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 そして19分、敵陣で回すパスを受けたイニエスタは、左サイドで高い位置をとった酒井高徳に一度ボールを預けると、そのリターンをワンツーで、線を引くように裏へ通し、駆け上がる酒井に正確に合わせた。そのマイナスの折り返しを、エリア内で古橋がGKの逆をついて流し込んだ。

 イニエスタのショーは続いた。

 前半終了間際、GKが蹴ったボールをセンターサークル付近で競り合い、そのこぼれた球を、イニエスタはまず完璧なコントロールで止める。そして、完璧なビジョンとタイミングで、完璧なパスを前線の古橋に通した。古橋の突破はブロックされたが、そのこぼれ球を郷家友太が蹴り込んだ。

 スペインの天才MFは、ほとんど何もないところからチャンスを生み出した。

 後半は、神戸が再び劣勢になった。パスを繋げるどころか、守備組織はしばしば混乱し、バックラインの前にパスを通された。これでは"バルサ化"など幻想だろう。サイドも、特に右は札幌の攻撃に翻弄されることがしばしば。敵のフィニッシュ精度の低さに助けられていた。

「大差がつくような試合内容ではなかった。若い選手主体で、アグレッシブに戦ってくれたが、ワンツーから崩されて失点し、その後も安い失点を与えてしまった」(札幌/ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)

 札幌のほうが組織としては秩序があった。

 しかし後半17分、またもイニエスタが"降臨"する。エリア内にいた味方のヘディングクリアを自陣で拾うと、敵ゴールに背を向けてコントロールした後、左足で躊躇なくロングパスを送る。センターラインギリギリで抜け出した古橋に合わせ、GKとの1対1から3点目が決まった。相手のラインが高く、前がかりになっていたのを、背番号8は察知していた。

 この後、終盤に交代出場した下部組織出身のFW小田もプロ初得点を決め、4-0という大勝になった。お膝元での祝祭だ。

「前節、(鳥栖に)勝っていたことで、いい流れで戦うことができました。自信を持って戦えれば勝てる。チームが勝つことによって、自分も自信を持ってプレーできる」(神戸・古橋)

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