2020.09.23

最強・川崎フロンターレはなぜ圧倒的にボールを保持できるのか

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

消えていった天才Jリーガーたち>>

 川崎フロンターレが強い。Jリーグ史上最強かもしれない。

 18試合の1試合平均得点が3ゴールを超えている。平均得点で2位の横浜F・マリノスが1.95。サッカーで1試合平均の得点は1点台が普通で、川崎のように毎試合3点以上とるほうが例外である。

圧倒的な川崎の攻撃を司る、大島僚太 川崎の得点パターンは多岐にわたる。パスワークでの崩し、ドリブル突破、クロスボールから、セットプレーからと、あらゆる形から得点している。それだけ攻撃が多彩なのだが、決定率そのものもリーグトップ。多くのチャンスをつくり、しかも抜かりなく決めている。

 この得点力の土台は圧倒的なボール保持力にある。川崎が優れているのはパスワークの質であり、技術の高さだ。それが端的に表れているのが、自陣からつないでいくビルドアップでの形状変化のなさである。

 Jリーグの多くのチームは、自陣でパスをつなぐ時にポジションを変化させる。横浜FMで有名になった「偽サイドバック(SB)」もあれば、MFがセンターバックの間に降りてくるなど、フォーメーションの形を変えることでパスをつなぎやすくしている。

 ところが、川崎はあまり形状変化を使わない。少なくともチームとして決まった形はなく、元のポジションのまま平然とパスを回してしまっている。これは技術が高くないとできない。

 たとえば、サイドバック(SB)からMFへのパス。斜め前方、中央へのパスを川崎は平然とつないでいる。

 通常このパスコースは選択しない。なぜなら、パスを受ける側が技術的に難しいからだ。パスが来る方向と、相手が寄せてくる方向が反対なので、相手とボールを同時に見ることができない。逆に守備側にとっては、ここはボールの奪いどころと言える。

 自陣の中央付近でボールを奪われればピンチに直結する。だから、多くのチームは受け手がフリーでないかぎりこのパスコースは選択しない。また、このコースを選択しなくていいように他の選択肢を用意する。そのために形状変化を行なっているわけだ。