2020.09.11

中田英寿、高原直泰の記録を越えた男。
「ケチャップ、ドバドバ」の始まりか

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

◆日本サッカー界の「天才」と言えば?>>

 ゴールというものは、入らないときはまったく入らないが、得てして1点入ってしまえば次々に入る。かつて本田圭佑が口にした「ケチャップ、ドバドバ」のたとえ話ではないが、なるほど固まって出にくくなっても、一回出てしまえば、そのあとはドバドバ出るケチャップみたいなものかもしれない。

 言い換えれば、すべては「最初の1点」。それさえクリアしてしまえば、あとはそれまでの苦労がウソのように点が取れるのだが、とにもかくにも、最初の1点が難しい。

 川崎フロンターレの20歳、FW宮代大聖もそうだった。

 今季初の公式戦となった2月16日、ルヴァンカップ・グループリーグ第1節の清水エスパルス戦。この試合に先発出場した宮代は、開始から1分と経たずに、いきなり決定機に遭遇した。

 ゴール前へフリーで走り込んだ宮代の足元へ、左サイドからMF大島僚太が送った正確なクロスがドンピシャのタイミングで入る。余裕を持って右足を合わせる宮代。早くも先制ゴールか――。誰もがそう思った次の瞬間、ボレーシュートは無情にもゴール右に外れた。

「(試合の)しょっぱなすぎて......」

 試合後、苦笑いとともに逸機を振り返った宮代だったが、試合全体を通してみれば、プレーの出来は悪くなかった。「積極性や(ゴール前での)迫力が自分のよさ。そこは出していきたい」との言葉どおり、果敢にゴールへ向かう姿勢が目についた。

 この先、彼がゴールを決めるまでに、きっとそれほどの時間はかからないだろう。そんなことを想像させるに十分なものだった。

 ところが、宮代のケチャップは思った以上にしっかりと、カチカチに詰まっていた。

 宮代はその後、この清水戦も含め、J1とルヴァンカップを合わせて12試合に出場。そのうち4試合は先発出場したが、なかなかゴールには至らなかった。