ベルマーレ、逃げ切ってJ1残留。「湘南スタイル」の原点に立ち返った (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images



「前半は思ったよりボールを奪えなかったり、こぼれ球も拾えなかったりした。ひとりひとりのポジショニングはトレーニングでもやってきたのですが、正直、それほどうまくいきませんでした。

 ただ、後半は完全に後追いになったことによって、相手は前に出てこないだろうし、攻撃も中途半端になるだろうということで、一方的に(攻めることに)なると思いました。前半は、ペナルティエリアのなかに入れていなかったので、入っていける選手ということで(後半開始から)クリスランを投入しました」

 試合後に浮嶋監督がコメントしたクリスランの投入も含め、後がない湘南は後半になってようやく本来の姿を取り戻した。前半開始直後のように前からプレスをかけはじめ、奪われた後も素早くボールを回収。ボールを奪ったら2列目、3列目の選手も前に出て攻撃に厚みを増す"湘南スタイル"の原点に立ち返った格好だ。

 後半64分の松田天馬の同点ゴールは、そういう意味で必然の一撃だったといえるだろう。

 同点後は徳島の反撃を受けることになった湘南だったが、試合終了間際のピンチも運よく切り抜けたことで、なんとかミッションを達成。文字どおり薄氷を踏む思いで、クラブ史上初となる2年連続のJ1残留を果たすこととなった。

「自分たちのよさが出せるからこそ、負けても勝ってもやり切った感が生まれ、負けてもサポーターが応援してくれて、そのなかで勝てる試合が出てくる。最後はそのベースだけで戦ったので、来年もっと上に行くためには、そのベースに上積みすることが大事になってくると思います。ただ、そのベースを忘れずに今シーズンを終えられて、そのうえで残留できたことが一番よかったです」

 試合後に齊藤が語った「ベース」とは、クラブが8年間かけて築きあげた"湘南スタイル"である。浮嶋監督の続投が決まった来季も、湘南は引き続き「ベース」の上積みを追及しながら、再びJ1の荒波にもまれることになる。

 継続は力なり。果たして、来季の湘南にその言葉は当てはまるのか。それとも、抜本的改革が求められることになるのか。いずれにしても、浮嶋監督と湘南の戦士たちの挑戦は、来季以降も続くことだけは間違いない。

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