川崎F、悲願のルヴァン杯制覇へ。
光った重鎮コンビのリスク管理 (2ページ目)
また、ベテランふたりの献身性も見逃せない。第1戦で温存された中村と小林悠である。前線で縦関係を組む重鎮コンビは、攻撃で違いを生み出すだけでなく、相手ボールになれば執拗なプレスで出しどころを封じた。小林は言う。
「憲剛さんとふたりで相手のボランチをチェックするところは徹底しました。点を獲りにいく意識はありましたけど、失点しないことも重要。前線の守備だったり、そういうところはうまくできたと思う」
アウェーゴールを狙って攻撃しつつ、守備もしっかりして相手に隙を与えない。そのアンビバレントなテーマを両立できたのは、川崎に備わるボール支配のテクニックに加え、チーム全体に行き渡ったリスク管理の意識があったからに他ならない。とりわけ、前半は完璧とも言える内容で、本来は攻勢を仕掛けたかった鹿島の気勢を削ぎ、1本のシュートも打たせなかった。
加えて、川崎にとって大きかったのは、大島僚太の復帰だろう。
故障で長期離脱を強いられていたナンバー10は、4日前に行なわれた第1戦で復帰すると、途中出場からいきなり決勝点を演出する活躍を披露。この日も57分からピッチに立つと、卓越した技術と戦術眼を駆使し、わずかに鹿島側に傾きかけた流れを引き戻すパフォーマンスを見せつけた。
大島のパスワークを起点に、川崎は終盤にも多くの決定機を生み出した。本来であれば、負けているチームがなりふり構って攻め込む時間帯である。しかし、川崎は最後までボールを支配することで、相手に攻撃の時間を与えなかった。結局試合はスコアレスドローに終わったものの、まるで危なげない戦いぶりで、試合巧者の鹿島を完全に寄り切った。
「個人的に、鹿島は憧れというか、ああいうチームになりたいという思いを持っていた。今日は隙のない試合運びや結果にこだわるところを、自分たちも出せたと思う」
小林が話したように、川崎の戦いぶりは、勝つべきチーム、結果を出せるチームの風格を携えていた。
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