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サッカールール改正でハンドの
基準再定義。反則になるケースは? (5ページ目)

  • 清水英斗●取材・文 text by Shimizu Hideto
  • photo by Getty Images

 また、これまでも審判は、新ルールに似た基準で笛を吹くケースが多かった。攻撃側の手に当たったと視認できれば、ハンドと判定する傾向は強かったし、守備側のスライディングの支え手に当たったときも、意図なしでハンドにはならない。誰かに当たって跳ね返ったボールも、避けようがないから、意図なしで反則にはならない。新ルールも旧ルールも、判定結果はほとんどのケースで一致する。

 つまり、今までは審判の主観やグレーゾーンの幅の中で、「サッカーはそうあるべき」という解釈に基づき、結果として帰結していた判定について、その基準をあらためてハッキリさせた、と言える。誰が見ても同じ解釈になるように、客観性を高めて。それが今回のハンド改正の大筋だろう。だから選手のプレーは、それほど大きく変わるわけではない。

 変わるのは、審判が判定を行なうステップと、その内容をどう外部に説明するか。この部分だろう。それに関しては、基準が明確になったことで、逆に審判が苦しむケースが増えるかもしれない。

「映像で見れば誰でもわかりますが、瞬間ですから。最初は腕が上がっていても、ボールが当たる瞬間に下がっている可能性もあります。でも、腕が上がっている状態の残像があると、レフェリーはPKを取るかもしれない。じつはこういう基準が明確になっていくと、人間の目で判定するレフェリーは、すごく辛い立場になります。映像で見て、新ルールと照らし合わせたら、"えっ違うじゃん"となってしまう。すごく大変になると思います」(小川審判委員長)

 たしかに、基準が明確になったのは良いことかもしれないが、この複雑なルールを適用するレフェリーは大変だ。

 そもそも、このルール改正は、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の存在を念頭に置いているように思える。

 ハンドの基準が"意図的に手で触った"では、VARは介入するべきかどうか、判断が難しいだろう。しかし、新ルールのハンドは、0か1かでデジタルに判定できる項目が多いので、VARが素早く判断し、介入しやすく、根拠も説明しやすい。不自然に体を大きくしたか、それだけの基準なら、静止画でも見極められるだろう。VAR向きだ。だとしたら、やはりJリーグも、VAR導入待ったなしか。

 Jリーグでは、J1が8月2日、J2は8月4日、J3は8月3日の試合から新ルールの適用が開始された。また、ルヴァンカップは9月4日から適用が始まる予定で、ルヴァンカップ決勝トーナメントはVARが導入されるため、その点も注目だ。

 単純にルールがどう変わるのか、だけではなく、なぜルールが変わったのか。サッカーはどの方向へ進もうとしているのか。そんなことも感じながら2019年、Jリーグ後半戦をお楽しみあれ。

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