GKはゴールのすべては守れない。ドイツ式技術理論と日本人の可能性 (3ページ目)
そして、「ドイツ人はスポーツ選手に限らず、幼い頃からみな自立しています。より世界基準の選手を育成すると考えた場合、『自立』という部分はもっと育まなければいけません」と松本氏は語る。
「中村航輔選手は昔から自分の意見をきちんと持っていましたし、納得しなければやろうとしない選手でした」
傍目からは「生意気」に映ることも多かったようだが、柏では、選手としての自立、GKとしての決断力を養うべく対等な目線、姿勢でコーチが指導にあたっている。「あれをしなさい」「こうしなさい」では本当の意味で自立した選手は育たない。
ドイツと日本では大きく生活、文化、価値観が異なるからこそ、松本氏は「ドイツの育成システムや指導理論をそっくりそのまま導入しようとしても不可能です」と話す。Jリーグの本プロジェクト担当者によると、わずか半年ではあるが、すでにカイザースラウテルンでは松本氏のきめ細かな指導がスヴェン氏を筆頭に高く評価されているという。
日本での実績、結果を一旦脇において単身でドイツへ飛び込み、柏はもちろん、「日本全体のGKのレベルアップにつなげたい」という強い想い、「日本からも世界に通用するGKを育てることができる」という信念を持ってGK大国の知見を素早く吸収する松本拓也氏。その存在自体が今後の日本のGK育成の明るい未来と可能性を示している。
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