GKはゴールのすべては守れない。ドイツ式技術理論と日本人の可能性
「GK大国ドイツから見えた日本人GK育成の可能性」【後編】
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「マヌエル・ノイアー(バイエルン)ではなく、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)なのです」
ドイツで研修中の松本拓也氏(柏レイソルアカデミーGKコーチ)はGKの育成モデルがドイツ代表の正GKではなく、意外にも控えのテア・シュテーゲンであると話す。
ドイツ代表GKのテア・シュテーゲンは、現在バルセロナの守護神「ノイアーは驚異的な身体能力の持ち主ですので、育成のロールモデルにはなりにくい存在です。また、昨季のケガの影響からプレーの波もあり安定感に欠ける面があります。一方のテア・シュテーゲンはドイツ国内では『育てられるタイプのGK』と考えられています。彼の一番の強みは的確な判断で、ドイツのGK理論に沿ったプレーをしています」
実際、松本氏が所属するカイザースラウテルンでも「われわれの考える正しいプレーとは」という理論を紹介する際、テア・シュテーゲンのプレー映像を用いることが多く、それはドイツサッカー協会のGK指導理論においても同様だという。
しかし、松本氏の解釈では「そうした理論が先にあったからテア・シュテーゲンが育ったわけではなく、テア・シュテーゲンのようなGKの登場によって理論がより深まり、整理され、現在は理論とテア・シュテーゲンが共にブラッシュアップされている」状況とのこと。
ドイツにおけるGK理論で、特徴的で日本にないものは「ゴールのすべては守れない」という前提が、理論と技術指導にあることだ。その前提、ある意味での割り切りを設定することで「ここは仕方ない」という「捨てゾーン」と「ここは絶対に守らなければいけない」という「責任ゾーン」が明確になる。
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