39歳GK南雄太は、「永遠のような失点のループ」に耐えて進み続ける (3ページ目)

  • 小宮良之●文 Komiya Yoshiyuki photo by Etsuo Hara/Getty Images

「でもね、人のミスを祈るGKなんていないですよ。GKはGK同士だけでわかり合えるところがあって。そこのもどかしさと、みんな格闘しているんです。割に合わないポジションですよ。失点すると責められる。でも、それに向き合うしかない。GKが天職とか、俺にはとても言えません。GKをこれだけ追求し続けても、まだ答えは見つからないから」

 答えを見つけようと追い続ける。その作業は苦しい。そんな強い男だから、39歳でも最後尾を任されるのだろう。

 2017年、南はほぼ1シーズンを棒に振っている。開幕戦で、左足膝裏の「窓」と呼ばれる筋肉と腱が交差する箇所がずれ、肉離れを起こした。1カ月あまりで無理して復帰。たったひとつのポジションを失いたくなくなかった。しかし、復帰して異常を感じた。膝裏にしこりができて固くなり、足を伸ばすこともできない。MRIを撮ったら、出血が確認された。1カ月半の安静。何もしてはいけない日々が辛かった。

 ようやく足を動かせるようになったが、筋力が落ちていた。椅子から立ち上がる、というのが一歩目のリハビリで、その次が手すりを使って階段を上ることだった。体育館で一夏を過ごし、白い肌の自分を鏡で見た。サッカーをしていないのだ、と実感した。

「自分と向き合うようになりましたね。ハムストリングの故障で足が細くなっていた若手は、練習ですぐに身体を戻せるんですよ。当たり前ですけど、自分はベテランなんだなって。でも、若い頃は『自分のために』というプレーをしていましたがが、今は家族を含めてたくさんの人に支えられてきたのがわかって、それが力になっている。プロとして契約している限り、戦い続けろ、というメッセージだろうと」

 そう語る南は、復帰した今シーズン、チームを昇格争いにまで導いた。

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