真価を見せ始めたトーレスの告白。
「残留争いは人生で初めての経験だ」 (2ページ目)
試合後のミックスゾーンで、トーレスは20人近い記者たちに囲まれていた。英語の通訳を介して、質疑が続いた。ゴールを祝するのは当然だろう。しかし、そこに至る心理状態はどうだったのか。
スペイン語で直接、質問をぶつけた。
――ゴールするまでの2、3本は、決定的シュートが完全に"当たって"いなかった。あなたのような選手でも、やはりプレッシャーを感じるものなのか?
日本人の記者の質問に、一瞬、面食らったような表情を彼は浮かべた。日本では、シュートを外そうが入れようが、そこまで厳しい質問は浴びないのだろう。
「残留を争うというのは、自分にとって人生で最初の経験だから」
彼は少し苦味のある笑みを洩らして言った。世界最高峰の欧州チャンピオンズリーグで優勝を争い、リーガ・エスパニョーラやプレミアリーグ、セリエAで覇権を争ったゴールゲッターの告白だ。
「このプレッシャーの感覚は、新しいものだよ。降格しないように戦うというのは、僕にとっても初めての経験なんだ」
彼はそう言いながら、すでに余裕を取り戻していた。冷徹に物事を見極められる性格なのだろう。
「でも、そもそも全部のシュートを入れることはできないんだよ。それもフットボールの一部なのさ。(外したシュートも含めて)すべてが、チームを助けることになった重要なゴールにつながっているんだ」
10月、鳥栖が降格圏の17位に転落すると、イタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督が解任され、U―18を率いていた金明輝監督に交代した。以来、4試合で3勝1引き分けと、その好転は結果に如実に表れている。
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