イニエスタの前でJ1初ゴール。
17歳久保建英が「廊下」で開けた「扉」 (2ページ目)
対する久保は、凡庸なプレーに終始していた。2トップの一角を担ったものの、センターバックに激しく当たられると、前を向くのもままならない。そこでサイドに流れてボールを受けるも、はさまれて潰され、もつれて転倒した。厳しい時間が続き、明らかに試合に入れていなかった。
しかし、久保獲得に動いた横浜のアンジェ・ポステコグルー監督のスタンスは明確である。
「試合を重ねるなかで成長してほしい」
そして後半、久保は才能の片鱗を見せる。
後半11分、自陣からのパスを中盤に落ちて受けると、滑らかなターンから右サイドに左足で展開。そのビジョンとスキルは天性のものだろう。一気にゴール前に駆け上がる気配を見せ、神戸のバックラインを下げる。しかしペナルティーエリアに入ったところで、止まった。これで一瞬にしてフリーになる。
「(ボールを持つ松原健の)切り返すのが見えたから。少し下がって受け、トラップはずらさないように。コースは狙いましたね」
久保は自身のゴールをそう説明している。
スペインでは、「PASILLO INTERIOR(回廊)」と言われるバックラインの前に横たわる「廊下」で、「どの扉を開けるのか」を攻撃者たちは突き詰める。そこで扉を開ける時間的、空間的余裕を得られるかどうかが大事になるのだが、久保はそれを止まることによって、易々と得ていた。スペインの風を感じさせる非凡なプレーだった。シュートそのものの技術も高かったが、その前に勝負を制していた。
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