「トーレスに向けて蹴る」でいいのか。
3戦無敗、鳥栖のジレンマ (2ページ目)
この戦術はほとんど機能していなかった。しかし、鳥栖がボールを持てる時間が想像以上に少なかったことで、トーレスに蹴り込む形は自然と増えている。4-4-2でサイドに起点を作ろうとしたが、密度の高い中盤で後手に回ってしまい、苦し紛れに蹴るしかなかった。打つ手が限られたことによって、「トーレス・シフト」が作られた。
実際、トーレスはかなりの確率で、空中戦で競り勝っている。頭ではなく、胸で落とすような場面もあった。前半には、GK権田修一が蹴ったロングキックを、トーレスがバックヘッドで流し、それを受けた金崎夢生が倒され、ゴール前でFKを獲得している。
「(トーレスは)ヘディングは強いですね。練習から、(センターバックが挑んでも)ほとんど勝てませんから。少々(パスが)ずれたな、と思っても、首が強いから当てて飛ばしちゃう」(鳥栖・DF小林祐三)
トーレスは体格も大きく、跳躍力も高い。なにより準備動作で勝っている。相手を畏怖させる空気もまとい、しばしば混乱を誘う。その高さがひとつのアドバンテージになっているのは間違いない。
とはいえ、チームとしてトーレスに放り込む戦いをベースにするのが最善か、というジレンマはある。
トーレスの特長は本来、スペースに駆け出し、パスを受け、それを蹴り込む、という電光石火の一撃にある。しかし、Jリーグではそこまで高いラインを取るチームは少なく、スペースは限られている。
また、カウンターサッカーが根付いていないため、縦に速いパスを入れられる選手が少ないという事情もある。クロスをねじ込むゴールも得意とするが、プレミアリーグやリーガ・エスパニョーラのようなクロッサーも見当たらない。
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