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イニエスタとプレーすると選手は思う
「自分は何もわかっていなかった」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 西村尚己/アフロスポーツ●写真 photo by AFLO SPORTS

 吉田孝行監督は反省の弁を述べているが、そういう感覚もイニエスタがもたらしたものではないだろうか。

 Jリーグはラ・リーガ(スペインリーグ)と比べて、パスのジャッジのスピードも強度もやや低い。そのためにマークを外せず、緩慢としたリズムに終始する時間帯がある。実はそこはサガン鳥栖のフェルナンド・トーレスも強く要求しているところで、走るスピード以上にボールを回すスピードを上げる必要がある。彼らのようなトッププレーヤーは、シュートのような速さのパスを止めることで、反転するスピードに変えられるのだ。

「高い強度の中でどれだけのプレーを見せられるか」

 Jリーグは、その命題をイニエスタやトーレスによって突きつけられている。トレーニングのなかで、高度な感覚を身につけるしかない。それは一朝一夕では成し遂げられないだろう。

 イニエスタの立っている境地は、日本人選手の誰も及ばないものだとはいえ、彼にしても、積み上げてきた経験を糧にしている。

 イニエスタは、トーレスとともに2001年のU-17W杯に出場している。ところが、グループリーグで敗退。注目されていた2人にとって大きな挫折となった。だが彼らはそれを糧にプレーを高め続けることで、選手として大成した。

「お前と俺で、W杯を取ろう!」

 トーレスがユニフォームにそう書いて、イニエスタに手渡したエピソードは有名である。そして2010年南アフリカW杯で、2人は世界王者となる。挫折のない天才はいない。

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