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イニエスタとプレーすると選手は思う
「自分は何もわかっていなかった」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 西村尚己/アフロスポーツ●写真 photo by AFLO SPORTS

「イニエスタがいたら、もっと点、入ってた?」

 8月1日、大阪。キンチョウスタジアムでは試合後、子供が父親らしき男性を見上げながら聞いていた。父は苦笑するしかない様子だった。親子はきっと、アンドレス・イニエスタ目当てに試合に訪れたのだろう。

 この夜、セレッソ大阪ヴィッセル神戸の試合チケットは完売。世界最高の選手、神戸のMFイニエスタを見ようと、チケットはプラチナ化していたという。ところが、肝心のイニエスタは、柏レイソル戦後に「家族を連れて戻ってくる」と、一時帰国した。

 試合は、酷暑だったこともあってペースが上がり切らず、それぞれオウンゴールで1-1の痛み分けという結果に終わっている。

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 観客がそう感じたとしても、いたし方あるまい。チケットが完売のはずのスタジアムに空席が出ていたこと(収容人数1万8000人に対して、この夜の入場者数は1万4000人)が、そんな気持ちを代弁していた。「会社関係者でチケットをおさえたが、イニエスタの帰国で余ってしまい、無駄になってしまった」などという話も聞こえてきた。

 イニエスタの"不在の在"を感じさせる夜になった。

「イニエスタのプレーを目の前にして、フットボールはこういうものなのか、と思い知らされた。それまでの自分は何もわかっていなかった。彼は他の選手とはまるで違う」

 クロアチア代表としてロシアW杯で準優勝したイヴァン・ラキティッチは、バルサでチームメイトになったイニエスタについてそう洩らしている。フットボールとの"邂逅"。ラキティッチほどの選手にしてからが、そうなのだ。

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