イニエスタとプレーすると選手は思う
「自分は何もわかっていなかった」
「イニエスタがいたら、もっと点、入ってた?」
8月1日、大阪。キンチョウスタジアムでは試合後、子供が父親らしき男性を見上げながら聞いていた。父は苦笑するしかない様子だった。親子はきっと、アンドレス・イニエスタ目当てに試合に訪れたのだろう。
この夜、セレッソ大阪対ヴィッセル神戸の試合チケットは完売。世界最高の選手、神戸のMFイニエスタを見ようと、チケットはプラチナ化していたという。ところが、肝心のイニエスタは、柏レイソル戦後に「家族を連れて戻ってくる」と、一時帰国した。
試合は、酷暑だったこともあってペースが上がり切らず、それぞれオウンゴールで1-1の痛み分けという結果に終わっている。
Jリーグ第19節、セレッソ大阪と引き分けたヴィッセル神戸「肩すかし」
観客がそう感じたとしても、いたし方あるまい。チケットが完売のはずのスタジアムに空席が出ていたこと(収容人数1万8000人に対して、この夜の入場者数は1万4000人)が、そんな気持ちを代弁していた。「会社関係者でチケットをおさえたが、イニエスタの帰国で余ってしまい、無駄になってしまった」などという話も聞こえてきた。
イニエスタの"不在の在"を感じさせる夜になった。
「イニエスタのプレーを目の前にして、フットボールはこういうものなのか、と思い知らされた。それまでの自分は何もわかっていなかった。彼は他の選手とはまるで違う」
クロアチア代表としてロシアW杯で準優勝したイヴァン・ラキティッチは、バルサでチームメイトになったイニエスタについてそう洩らしている。フットボールとの"邂逅"。ラキティッチほどの選手にしてからが、そうなのだ。
1 / 4