ジュビロ・名波浩監督の告白。「サッカー人生で初めて悔し涙を流した」 (5ページ目)

  • 原田大輔●取材・構成 text by Harada Daisuke
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「開幕戦の川崎フロンターレ戦は0-3で敗れましたが、後半の内容は悪くなかった。第2節のグランパス戦も(相手に)パスをつながせなかったし、相手を間延びさせることができていた。ルヴァンカップのエスパルス戦も、相手が守備的な戦いを挑んできたこともあって、こちらがかなり押し込んでいた。ただただ、結果だけがついてこなかった。

 これが、先ほど触れた"成功体験"という話につながっていて、ひとつ勝てば、選手たちは自信を取り戻すだろうと踏んでいた。実際、選手たちも最初は昨季の戦い方を思い起こそうとしながらプレーしていたと思うけど、勝つことで、そうした動きも自然と整理されていった。そして、若手がその成功したグループの中に、『自分も入りたい』と思うような流れを作ることができた」

――チームがいい流れをつかんだ試合、ターニングポイントとなるゲームなどはありましたか。

「実は......セレッソ戦の試合後、不覚にも選手たちの前で号泣してしまって......。あの試合は前半、被シュートをゼロに抑えることができていたんですね。そうした展開で迎えた後半、不可解な判定でPKを取られて1-1の引き分け。それが本当に悔しくて、試合後のロッカールームで『一生懸命やっているやつらが報われないのはかわいそうだ』と、選手たちを前にして思わず泣いてしまった。

 2015年にJ1昇格を決める2週間前に父親が亡くなって、昇格が決まった試合で堪え切れずに泣いてしまったことがあったけど、純粋に試合の結果に対して涙を流したのは初めてのことだった。

 小学生からサッカーを始めて、これまで悔しいことなんて何回も経験してきた。それこそ選手時代には何度も、試合終了間際に失点したこともあれば、タイトルを獲り逃したこともあるけれど、一度も悔し涙なんて流したことはなかった。

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