永井秀樹、ユース監督2年目。あの前橋育英を撃破した理想のサッカー (2ページ目)

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

 指導者として、血となり肉となる充実した日々を過ごした永井に、プリンスリーグでの今シーズンの目標を聞いた。

 永井は「全勝優勝」と答えた。

 しかし、迎えた2018年4月8日の開幕戦で、ヴェルディユースは、敵地で三菱養和に1-3で敗れ、いきなり出鼻をくじかれた。

「選手は普段以上に緊張というか、プレッシャーを感じていた。プリンスリーグ開幕直前の船橋招待では優勝するなど、今年の3年生は勢いに乗ればすごい力を発揮できるけど、打たれ弱い部分もある。そこを踏まえて、シーズン前の合宿ではメンタルトレーニングにも力を入れた。でも三菱養和戦は、2失点したあと1点取り返して、『さあこれから』という時にまた失点した。それで、『ああ、ダメか』みたいな雰囲気になってしまった。

 試合に負けたことよりも、そういう気持ちになってしまうことの方が課題。選手たちにはどんな状況でも平常心を失わず、『折れない心』を身につけることの大切さを伝えていかなければと思った」

 折れない心――。

 現役時代、永井はどれだけ逆境に立たされても諦めることはなかった。信念を曲げない性格は時に指揮官やフロントとの衝突を招き、スタメンを外されたり、クラブを追われることもあった。それでも腐ることなく、いつもベストの状態でピッチに立てるよう準備を怠らなかった。

 横浜フリューゲルス時代、「負けた時点でクラブ解散」というJリーグの歴史上、最悪の状況下に置かれた時もそうだった。

 クラブ消滅が決まったのち、フリューゲルスは9連勝、そして天皇杯優勝という奇跡を起こした。そこにはエースナンバー10を背負い、攻撃の中軸として活躍した永井の存在が大きく作用していた。

 才能だけでは、プロの世界で通用しない。

 才能は、本気の努力や研究、信念を貫く心があれば超えることができる。

 指導者になった永井は、そんな「折れない心」の大切さを、日本サッカーの未来を担う教え子たちに伝えようとしているのだろう。

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