新連載・アントラーズ「常勝の遺伝子」。生え抜き土居聖真は見てきた

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

遺伝子 ~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(1) 
土居聖真 前編

「ピッチが凍っていて、カッチカチだった。スパイクが刺さらず浮いているような状態。みんな慎重にプレーせざるを得なかった。しかも、前半は守備がハマらなくて、難しい入り方になってしまった。でも、ハーフタイムのロッカールームでみんなが修正しようと、声を出し合っていたのが、すごくよかった」

 2月21日、韓国・水原ワールドカップスタジアム。マイナス2度の気温のなか、AFCアジアチャンピオンズリーグの第2節。水原三星に1-2で勝利した鹿島アントラーズの昌子源がそう試合を振り返る。

 ホームで戦った第1節、対上海申花戦では早々に失点し、その後、猛攻を続けながらも1点しか返せず、ドロースタートだっただけに、アウェーで勝ち点3の意味は小さくない。同時に2試合連続先発の鈴木優磨や、初戦は左、この試合では右と両サイドバックを務めた新加入の安西幸輝、昨シーズンからボランチに定着した三竿健斗など、若手選手が勝利に貢献できたのも大きな収穫となった。

「やっぱり、ゴールを決めないとね」

 柳沢敦コーチは笑顔を見せたが、その一方、羽田憲司コーチは「勝ったからよかったけれど......」と終了間際の失点を悔やんでいる様子だった。現役時代のポジション、今の担当部門によって、表情に微妙な差があった。そして、大岩剛監督は「初勝利だね」と安堵感を漂わせていた。

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 プロサッカーリーグが誕生して25年が経ち、日本代表が5大会連続でワールドカップ出場を重ね、日本サッカー界は新時代を歩き続けている。そんななか、この国で唯一変わらぬスタイルで歴史を綴るチーム、クラブがある。それが鹿島アントラーズだということに異を唱える人はいないだろう。数々のタイトルを重ねて、常勝軍団と胸を張れるキャリアを歩んできた。

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