高校サッカーの新鋭が強豪校を連続完封。U-16大会をデータで解析 (3ページ目)

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 同点に追いつこうと前がかりになった静岡学園の裏を狙っていたのは、46番MFの鎌田大夢だ。兄は、今年6月にサガン鳥栖からブンデスリーガのフランクフルトに移籍した鎌田大地。本人も「兄譲り」と話す視野の広さを活かし、ひとりで13本ものスルーパスを供給した。

 このスルーパス13本という数字は、川崎フロンターレの司令塔・中村憲剛の今シーズン最多スルーパス数(26節:清水戦での12本)を上回る。そんな"最大の武器"で何度も決定機を演出したことで、静岡学園はその度にラインを下げざるを得なかった。

 その鎌田をはじめ、昌平の各選手は終始プレッシャーをかけるために走り続けた。球際も粘り強く、その選手が抜かれても他の選手がすぐさまカバーに回る。その意識の高さが、決勝までに星稜高(石川)や野洲高(滋賀)といった選手権の優勝経験校さえも完封する原動力となった。

昌平の無失点優勝に貢献し、大会MVPを獲得した西澤昌平の無失点優勝に貢献し、大会MVPを獲得した西澤 大会MVPの西澤は、この3日間でのメンバーの成長をこう話す。

「普段から、監督からは"チャレンジ&カバー"を徹底するように言われていますが、今大会ではそれができたように思います。この大会の前までは、コミュニケーション不足や集中力不足などで失点を重ねる試合が多かったので、この時期に、強豪校を相手にそれを改善できたのは自信につながります。トップチームのメンバーに入ることは簡単ではありませんが、この経験を活かしてさらに成長したいです」

 西澤も述べたように、多数の部員を抱える強豪校でレギュラーを獲得するのは容易ではなく、常に公式戦が続く中で高校1年生が実践経験を積む場は限られてしまう。それゆえ、このようなU-16大会でタイトルをかけた真剣勝負で得られる経験は何物にも代えがたいだろう。
 
 静岡学園は10月14日に富士宮北高を2ー0で下し、昌平は10月28日に選手権予選の初戦を迎える。今大会に出場した選手がいきなりスタメンで活躍することは難しいだろうが、1年後、2年後にチームの主力としてピッチに立っていることを期待したい。

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