石井監督を讃えよう。レアルも驚く鹿島の「攻めながら守る」サッカー (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 サッカーには古くから「中盤を制すものは試合を制す」という格言がある。しかし、中盤でのプレッシャーが強まる現代サッカーにおいては「サイドを制すものは試合を制す」が、新しい格言として浸透。プレッシャーの少ないサイドを有効に活用することが、支配率を高める重要な要素になっている。 

 R・マドリードの59に対して鹿島の41。これは決勝戦のボール支配率だが、鹿島はこの関係で思いのほか健闘した。過去、最も差が著しかった試合は2011年決勝のバルセロナ対サントス(4-0)の71対29だが、鹿島とR・マドリードが対戦する今回は、それ以上に開いてしまうのではないか、つまり試合にならないのではないかと当初、危惧されていた。

 心配が杞憂に終わり、大善戦した理由は、サイド攻撃に徹した戦いぶりと密接な関係にある。実際、鹿島は危険な真ん中付近でボールを奪われる機会が少なかった。もちろん、それを連続させ、パニックに陥ることもなかった。R・マドリードのプレーに唸ることは幾度かあったが、鹿島のプレーに落胆する機会は少なかった。奪われる場所は、サイドという安全ゾーンがほとんど。鹿島は、非常に頭のよい計算された戦い方をした。

 石井正忠監督の力量のほどが偲ばれる。讃えるべきはまず監督。選手より先に挙がるべき名前だと思うが、この少々地味に映る監督の采配について、メディアはあまり言及していない。テレビ解説者しかり。

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