【育将・今西和男】小林伸二「決めつけず、押しつけずに伸ばす」
『育将・今西和男』 連載第21回
門徒たちが語る師の教え 清水エスパルス監督 小林伸二(3)
J1昇格を目指す清水エスパルスで指揮を執る小林伸二監督(C)S-PULSE
サンフレッチェ広島ユースの初代監督となった小林伸二は、創設3年で早々と全日本ユースカップ優勝という快挙を成し遂げた。4年目が過ぎると、今西はこの逸材を次にトップチームのスカウトに配置変換させる。日本一という結果を出した現場指導者をなぜ、1年後に編成部門の管轄に入れたのか。今西はこう述懐する。
「スカウトいうもんは、まずは選手を見るわけですが、それ以上に高校、大学の指導者とのコミュニケーションが大事な仕事なんです。小林には、さらにもっと多くの指導者と交流して、学んで欲しかったんですわ。見方を変えるいうんかな。若いうちはひとつの仕事だけではなくて、いろんなセクションにつけると後々になって、総合的に全部の力が伸びて行くんです」
小林自身はこの時期、スカウトを担当したことで『人を大事にすること』を学んだという。
「選手を取りに行くと、どんな選手もプロになる前に、いろいろなコーチや監督の指導を受けていると感じます。いわば、そんな愛情や情熱をかけられてきた人間を預かるわけですから、丁寧に人生に寄り添わないといけないと考えるわけです。それは現場指導でも生きる。今西さんには、得意分野で伸びていく前の準備をさせてもらったと思いますね」
小林は1997年、98年とスカウトを担当し、1999年にはナショナルトレセンの中国地域の指導も担当する。やがてトップの若い選手を育てたいという気持ちに駆られて、アビスパ福岡のサテライトの監督に就任する。
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