大久保嘉人、佐藤寿人に思う。ストライカーに大切な「コミュ力」 (4ページ目)
そのことに気がつけるように、若い時に指導しておかないといけない。これは教育とは異なる。プロのアスリート、サッカー選手として生きるためにどうするかということだ。
佐藤寿人(広島)がなぜ毎年、二桁得点を取り続けていられるのか? それは、技術や体力以外に、コミュニケーションスキルも高いからだ。彼はチームメイトのプレースタイルや特長を理解しているだけでなく、たとえば、誕生日プレゼントをチーム全員に渡す。人間だから感情があって、それがプレーにも表れてくるわけだ。ここが重要で、技術、体力、戦術に加えて、人間同士の信頼関係の築き方が分かってくると、FWは点がたくさん取れるようになる。
シュートを決めた直後に、アシストしてくれた選手に「ありがとう」とすぐに言えるかどうか。それはパスを出してくれた味方に「おまえのおかげで点が取れた。だからまたパスを出してくれよ」というメッセージだ。点を取って、自分ひとりの手柄であるかのように喜ぶ。そんなヤツには次はパスを出したくないと思うのが人間の感情にはある。そういう振る舞い、コミュニケーション能力も、技術や体力と同じようにストライカーにとって重要ということだ。
そして、若手FWがそうしたことに早く気がつける土壌を作ってあげるのが、指導者の役目のひとつだと思う。
この先、得点王を取って代表に入る若手や、得点王になって海外の強豪クラブに移籍する若手がもっと出てきてほしい。Jリーグでベテランばかりが得点王争い上位にいるのは、正直なところ少し寂しいものがある。今季19得点の宇佐美貴史以外にも、はつらつとした若手、たとえば、広島の浅野拓磨のような若手が、ゴールを量産することに期待したい。
著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。
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