J通算得点記録にあと2点。大久保嘉人がゴールを量産する理由 (4ページ目)
「30歳を超えたら? 自分はサッカー選手、やってないっしょ」
20代前半のインタビューで、当時の彼は言い切っている。しかしその発言は投げやりや無責任で発したものではなかった。小さな身体の大久保は、どんなに巨大な敵に対しても怯まずに立ち向かう。まるで猛火に包まれた石がピッチを転がるように。そこまで激烈な戦い方で、彼自身が「長いこと続くわけがない」と弁(わきま)えていたのだ。
もっとも、大久保は全力でプレーに殉じる中で、図らずも戦いの向こうにある平衡感覚に出会えた。
「若い頃は、イエロー(カード)もらう、退場する、そんなのことの繰り返しで。いかなくていいところをいってしまったりね。若かった。でも、若い頃はそれくらいでいいと俺は思う。だって、何もやらなくて試合に出られなくなったら、プロは終わりだから。プロはみんな一直線のところやから、成功したいと思うんなら、なんもせずにできるはずない」
そう豪語する大久保には、道を切り開く覇気があった。豊富な闘争心があったからこそ、彼はキャリアの中で成長進化を続けられた。
Jリーグ最多得点記録は、必ず更新するだろう。しかし、彼は自らの過去を愛撫したりしない。
<目の前の戦いに全身全霊で向き合う>
その流儀こそが、彼を生粋のゴールゲッターたらしめるのだ。
4 / 4