J通算得点記録にあと2点。大久保嘉人がゴールを量産する理由 (3ページ目)
例えば、大久保はヴィッセル神戸では左サイドのMFでプレーする試合が多く、得点機は制限された。ただ、彼自身はそれがスキルアップにつながったと信じている。サイドや中盤に下がることで敵の視界から消え、見失ったところで一気にゴール前に姿を現す、その駆け引きを身につけられた。大久保は得点が乏しかった時期でさえ、ゴールゲッターとしての深みを増していたわけだ。
その後、彼はボールプレーを信奉する風間八宏監督率いる川崎に移籍し、必然的にトップスコアラーになった。その点、彼は運命を味方にしているのかもしれないし、運命を引き寄せる力があるとも言える。
「川崎に来てから変わったと言われるけど、本質的な部分は何も変わっていない。ここの部分はね」
彼はそう言って、胸のあたりを叩いた。
大久保は南アフリカW杯、現役引退を真剣に考えたことがあった。大会ですべてを出し尽くし、気力が残っていなかったという。彼はピッチに出ると、敵味方に容赦しないし、自身もズタボロになるまで戦い続ける。留め金がついていない。それは戦闘者としての一種の異能と言えるだろう。
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