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高橋陽一氏『大空翼の夢はW杯優勝、作品もそこを目指したい』 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 写真●村上庄吾 photo by Murakami Shogo

「作品を描き始めた当時は、まだ日本にサッカー文化は根付いてなかったと思うんです。そんな中、僕は1978年のワールドカップを見てサッカーを好きになったんです。だから、当時の日本リーグ、高校サッカー、少年サッカーというより、わりと最初から僕の視点が世界のサッカーだったんですね。おそらくその辺がヨーロッパや色々な国々で受け入れられたんじゃないでしょうか。それと、ヨーロッパなどではワールドカップやユーロの前になると、アニメの再放送をすることが多いようです。世代を超えて、選手に影響を与え続けているのは、そういうことも理由なのかもしれません」

 連載が始まった1980年代は、日本サッカー界にとって冬の時代と言える。まだプロリーグも存在せず、ワールドカップ出場は夢のまた夢。そんな不遇の時代にサッカー漫画に挑戦した高橋先生にとって、現在の環境には隔世の感があるに違いない。

「やっぱり日本もJリーグができて、サッカー文化が大きく変わったと思います。今では街ごとにクラブがあって、そこに育成部門まである。翼もそうなんですけど、当時はサッカー少年たちがプロになるためには、海外に行くしかなかった。でも、今であればプロ野球選手を目指すのと一緒で、日本でプロサッカー選手を目指せる環境があります。世界のサッカーも、普通にテレビで見られるようになりました」

 確かに、今では翼がバルセロナでプレーするように、香川真司がマンチェスター・ユナイテッドでプレーし、本田圭佑もミランで活躍している。この現象もまた、『キャプテン翼』の世界がリアルの世界をけん引した格好だ。

 ワールドカップはもちろん、日頃からサッカー観戦を欠かさないという高橋先生は、現在、昨年12月に東京都葛飾区に発足した南葛SC(東京都3部リーグ)をバックアップしながら、リアルな世界で夢の実現にチャレンジしている。後援会長として、クラブをJリーグに昇格させる、というもうひとつのライフワークだ。

「なかなか大変ですね(笑)。もともと葛飾ヴィトアードというチームがあって、それがJを目指して立ち上がったので協力してくれないかという話があったんです。その頃には葛飾区で翼の銅像を作ったりして、地元で色々なプロジェクトも始まっていたので、だったらチーム名も南葛SCにして、リアルの世界でやってみようと考えました。それこそ、この辺が南葛市みたいなサッカーの街になれば活気づいて面白いとも思いまして。

 おかげさまで葛飾区が協力してくれているので、今年は1年目ですけど、だいぶ進んでいるとは思います。まだ一番下のカテゴリーですけど、徐々に応援してくれる地元の人たちも増えてきて、選手たちも頑張ってプレーしてくれている。また、小学生年代は大空翼と同じ南葛のユニフォームを着てプレーしているんです。もうビジョンは見えているので、徐々にですけど、夢に近づいてくれたらと思っています」

 南葛SCの当面の目標は、東京オリンピックが開催される2020年までにJ3に上がることだという。道は険しいだろうが、これまでいくつもの夢を実現させてきた『キャプテン翼』の力があれば、それも十分に可能なはずだ。

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