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J2長崎主将の佐藤由紀彦、「松田直樹は今もライバル」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburou/AFLO

 これは例えば、JリーグのU-20チームが天皇杯決勝に進む以上の快挙であり、「優秀な人材が同世代で競った結果」と説明される。ちなみに1999年ワールドユースで準優勝した日本の選手たちも「黄金世代」と呼ばれ、その後も代表の中軸を担った。人は切磋琢磨すると、それだけ成長すると言うことか。

 拙著、『アンチ・ドロップアウト』『フットボール・ラブ』で描いた佐藤由紀彦と松田直樹のライバル関係は、実に濃密である。二人はユース年代に日の丸を背負い、横浜F・マリノスではJリーグ連覇を経験しているのだが、お互いがそれぞれの生き方を問うようなところがあった。

「この状況だったら、あいつはどう行動するだろうか」。ライバルに恥じない振る舞いをすることを、二人は常に意識していた。それぞれアタッカーとディフェンダーであるためポジション争いは存在しなかったが、もっと本質的な"男としての生き方"を競い合った。

「格好いいか、格好悪いか、それがすべて」。二人はまるで漫画のキャラクターのようなルールを口にしていた。

 松田は2011年夏に心臓病で練習中に倒れ、そのままこの世を去ることになった。彼はサッカー選手としての命をピッチで使い果たした。残された佐藤にとって、その喪失感は想像を絶するものだったが、彼は現役を貫くことに生きる価値を見出している。

「(松田)直樹はきっと、『俺には勝てねぇぞ』と思っているはずですよ」

 佐藤は淡々と言う。

「たしかにあいつはすげげぇな、と思います。自分が引退しても、あいつのようにたくさんの人が惜しんではくれないでしょう。でも俺は、あいつより1試合でも多くプレイして、1点でも多く点を取って、そして1年でも長くサッカーをやってやりますよ。それでいつか、『おい、直樹! 勝ったのは俺だぞ』と言ってやるんです。俺は現役にこだわって、鼻を明かしてやりますよ」

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