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【高校サッカー選手権】
富山第一、初V! 奇跡の逆転劇はなぜ起きたのか (2ページ目)

  • 粂田孝明(ストライカーDX編集部)●文 text by Kumeta Takaaki(STRIKER DX)
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 そして後半25分、富山第一はまたもや一瞬の隙を突かれて、星稜に2点目を許した。星稜の堅実な守備が崩れる気配はなく、これで勝負は決まったと思われた。が、絶体絶命の中、富山第一の選手、監督はまだ諦めていなかった。

 富山第一の選手は、ほとんどが地元出身者。対する星稜は、愛知や大阪など、県外出身の選手も多い。「北陸決勝」と騒がれていたが、富山第一の面々には「本当の北陸のチームは、オレたちだ」という自負があった。それが、逆襲の原動力となった。中盤で奮闘していた細木勇人が言う。

「(星稜と違って)こっちは、北陸の子ばかり。絶対に負けるわけにはいかないと思った。みんなで、最後の20分にかけよう! と誓った」

 そんな選手たちの気迫に応えて、大塚監督も勝負に出た。システムを4-2-3-1から4-3-2-1に変更し、大塚翔を1トップに上げて、突破力のあるFW渡辺と途中出場のFW高浪奨(3年)を2シャドーに配置。さらに、攻撃的MF村井和樹(3年)を「3」の左サイドに投入し、超攻撃型の布陣にした。これが、功を奏した。

「前にスペースができて、自分のスピードが生かしやすくなった」という渡辺が、相手のプレッシャーから解き放たれて、星稜DF陣を翻弄。もうひとりのシャドー・高浪も効果的なドリブル突破を仕掛けて、それまで以上に厚みのある攻撃を見せた。

 完全に息を吹き返した富山第一の攻撃は凄まじかった。残り時間はすでに5分を切っていたが、後半42分、左サイドを抜け出した村井のクロスを高浪が押し込んで1点差に詰め寄った。「これでいける!」と点を奪った高浪がボールを拾ってセンターサークルへ急ぐと、国立競技場のボルテージは最高潮に達した。

 その大声援に後押しされ、富山第一の波状攻撃は一段と迫力を増した。左右、中央から果敢に仕掛けていくと、終了間際、左サイドバック・竹澤の鋭い突破に星稜DFがペナルティーエリア内で思わず足を出してしまった。富山第一は、まさしく"土壇場"でPKを奪取したのだ。

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