小林祐三(横浜FM)のSB論。「守りでは誰にも負けない」 (5ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Fujita Masato

「この選手はどんな特長があるんだろう?」と相手のことを考える癖が身に付いた。自分の良さを味方に伝え、相手の良さを知る、そして良さを活かし合う。チームプレイヤーとして、味方を勝利に導くために全力を尽くせるようになった。ユース年代でエースとしてもてはやされる選手は、「俺が中心だ。おまえら分かるよな?」とコミュニケーションが未発達になるが、小林の場合、1/11としての責任感が増した。

「自分は100%取れるときにしか、インターセプトは狙いません。ぱーんとボールを奪えば格好はいいんですけど、少しでも危険なら自分は選択しませんね」

 敵と対したとき、彼の特長はより一層色濃く出る。持ち場を破られないことを第一に考えるため、ショー的要素は一切出さない。

「ディフェンスでは、自分から“矢印”を出さないようにしています。“こうしようああしよう”という意志を出さないというか、気配を消すというか。だから、あんまり駆け引きはしませんね。自分で動き方を限定してしまうと、相手の動きに対して遅れてしまうことがあるから」

 小林としては、「もっと攻撃してください!」とファンに求められると、心境は少々複雑だという。守備者としての愚直な流儀が疼(うず)くからだ。

「自分はタイトルを一度も獲ったことがないんです」

 小林は真っ直ぐな目をして言った。

「だから正直、今の自分や自分の状況が変わるとしたら、タイトルしかないんじゃないかなと思っています。今シーズンはチャンスですね。マリノスで優勝を狙うべきだし、『絶対に獲る』くらいの気持ちでなければ獲れないと思います。だから、『絶対に優勝します』と言っておきますよ」

 マリノスでプレイして3年目となる今シーズン、小林は堅実な働きを見せる。リーグ戦で首位争いを続けるチームで全21試合に出場し、17試合がフル出場だ。また、ヤマザキナビスコカップも8試合中7試合に出場。準々決勝で王者である鹿島アントラーズを下し、準決勝に駒を進めている。

 タイトルは手の届くところにある。

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