藤田俊哉×名波浩が検証「大宮が躍進し、磐田が低迷したワケ」 (3ページ目)
――ところで、おふたりの古巣であるジュビロ磐田が17位と下位に沈んでいます。低迷の原因はどこにあったのでしょうか。
名波 いちばんの原因になるのかどうかはわからないけれど、今季は3バックにして攻撃的にやっていこうとしていた。開幕前のキャンプからほとんど攻撃の練習ばかりだったらしく、ボールの動かし方だったり、攻撃のときの立ち位置だったり、そっちに時間を割いて、あまり守備のところはやらなかったみたいだからね。それがひとつの要因だと思う。
また、守備練習にしても、DFのエリア、中盤のエリア、攻撃のエリアと分けたブロック練習をしていて、選手たちがその意識を強く持ち過ぎてしまった感じがする。要するに、DF陣は中盤のエリアまで入っていってボールを取りにいけないし、中盤の選手も前線のアタッキングエリアでボールを失ったときに、そのまま中盤のエリアで待ち構えてしまった。結局、自分のエリアを越してボールを奪いにいったほうがいいときでも、自分のエリアに入ってくるまで待ってしまうとか、「今、相手にとってどっちが嫌なの?」という柔軟な判断ができなくなっていたような気がする。それで、攻守において、選手個々で判断するという部分も薄れてしまったのかな、と。
藤田 実際の試合は違うからね。状況に応じて自分でアレンジしないといけないことがたくさんある。
名波 それぞれのエリアでどう対応していくか、という意識づけをするのは別に悪いことじゃない。でも、選手の自由が失われて、個々のアイデア、発想というものがなくなってしまうのはよくないよね。
藤田 森下仁志監督は真面目できちんとしたいタイプだから、自分の志向する戦術の中で、選手にも規律よく動いてほしかったんだと思う。かといって、それが悪いわけじゃない。自由か規律か、どちらが正しいかは言い切れないからね。
名波「こういうやり方だけじゃなく、こっちもありますよ」と、監督にうまく進言できるような人材が周りにいれば、また違っていたかもしれない。森下監督にしても、別に周囲の意見を受け入れないというわけじゃなかっただろうから。第8節の湘南ベルマーレ戦では、人の配置を変えて4-0で勝っていたしね。その後、第9節のヴァンフォーレ甲府戦(1-2で敗戦)が終ったあとも、森下監督は「もう少し守備のところを整備しないと」と言っていたんだけど、それが最後の采配になってしまった。
――森下監督が解任されたあとは、長澤徹コーチが暫定で指揮を執り、中断期間にロンドン五輪で日本代表を率いた関塚隆監督の就任が発表されました。
藤田 Jリーグのクラブや五輪代表など、監督経験豊富な関塚監督によって、低迷している磐田がどう変わっていくのか、早く見てみたい。基本的に素材(選手)は変わっていないわけで、それを関塚監督の経験でどう生かしていくのか、楽しみだよね。
名波 練習試合を見たけれど、関塚監督の言っていることはシンプルだし、わかりやすい。それは選手にも伝わっていると思うから、(サッカーの)テンポとか、これまでとは違うものが出てくるのかな、という気はする。
藤田 選手たちが「(監督が)どっしりと構えている感がある」と言っていた。懐(ふところ)が深いというか、そういうところがチームにどう影響していくか、それもすごく楽しみな部分。
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