【Jリーグ】1年でJ1復帰を果たした甲府ファンの意外な心境 (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 そして今回は、降格から1年にして早くもJ1復帰である。昇格ではなく、「復帰」という表現を使えるところに、妙な優越感を感じてしまうのだ。

 一時は解散の危機に瀕していた弱小クラブが、ここまで成長したのである。ダメな子が、次第に一人前に育っていく様子を誇らしげに見つめる親とは、こんな気持ちになるのだろうか。

 もちろん、このままヴァンフォーレが大きくなっていって、いずれはJ1優勝を成し遂げるなどという絵空事はここで言うまい。レッズやガンバやグランパスのような地盤も予算もないのだから、彼らとは目指すべきところが違うことは、ファン、サポーターも十分に理解していることだろう。

 しかし、それでいいと思うのだ。

 当初は10年に1度、J1に昇格すれば御の字と考えていたのに、わずか8年で3度もその幸せを味あわせてもらえたのだ。この事実にもろ手を挙げて喜ぶよりも、むしろ運を使いすぎなんじゃないかと将来を心配してしまうほうが普通の感覚。それが、ヴァンフォーレ甲府の生きる道であり、小さな地方クラブを支えるファン心理だと思う。

 すべてのクラブがJ1優勝を目標とする必要はないし、それぞれにはそれぞれの事情がある。世界には、そんなスモールクラブは星の数ほど存在しているし、むしろ毎年のようにタイトルを狙えるクラブより、そちらのほうが圧倒的に多い。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る