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【Jリーグ】バルセロナと同じ布陣。
清水が展開するゴトビ監督の攻撃的サッカー (2ページ目)

  • photo by Fujita Masato

 攻撃のときには、前の5人⑦⑧⑨⑩⑪プラス、攻撃を展開しているサイドと同サイドのSBが攻撃参加で上がってきて、ペナルティエリア付近には6人が侵入してくる。テレビで観戦していても、モニターには6人が映っているはずだ。このとき、後方の3人③④⑥はバランスをとって、残ったSBと4人で守りに備える。

 これは、リスクをかけている攻撃的なスタイルだ。たとえば、先日のチャンピオンズリーグの準々決勝、バルセロナ対ミランで考えると、イブラヒモビッチ、ロビーニョ、ボアテングの3人で攻めて、7人で守っていたミランは「守備的」、6人以上がミランのペナルティエリア付近に侵入していたバルセロナは「攻撃的」と考えれば、今の清水はより攻撃的なやり方を選んでいるチームといえる。

 ビルドアップのときは、中央の3人⑥⑦⑧の距離感が重要で、それぞれがいいサポートをしてパスアングルを確保するために動く。また、攻守両面で村松がいい働きをしているし、両サイドバックもアップダウンができるので安定している。

 ピッチ幅の68mいっぱいにグラウンドを広く使って両サイドを有効に活用し、相手の守備ブロックに揺さぶりをかけていき、中央が空いたらそこを突く。あるいは、ボールを回しながら相手を中央に集結させたときはサイドに展開する。

 サイドアタッカーの高木はドリブルで切り込んでミドルレンジのシュートもあるし、チャンスメーカーとしても成長してきている。また、大前は日本代表の岡崎慎司のように、相手DFラインの裏に飛び出すのがうまい選手で、ゴール前の危険なところ、つまり、点をとれる場所に入っていく嗅覚がある。

 ほかにも、サイドアタッカーにはルーキーの白崎凌兵もいる。自分の得意な形をもっている選手で、左アウトサイドの位置から縦にも行けるし、右利きなので中央にカットインしてシュートもある。ただ、守備についてはまだ安定しているとはいえないので、この先、いい状態で経験を積ませていくのだと思う。

 守備については、相手が4-2-3-1のフォーメーションのときに特に威力を発揮するのがこの4-3-3で、中盤⑦⑧が相手のダブルボランチをおさえることができるため、相手はボールをうまく持ち運べなくなる。

 つまり、高い位置でプレッシャーをかけやすいということであり、守備ブロックをコンパクトにして、より高い位置でボールを奪うことができれば、相手ゴールまでの距離は自陣ゴール前で奪うよりも近いので、選手はより短い距離のスプリントで相手のペナルティエリアに入っていける。

 名古屋も基本フォーメーションは同じ4-3-3だが、清水は名古屋よりも守備ブロックがよりコンパクトであり、前から積極的にプレスにいくのが特徴で、守備についても「攻撃的」といえる。組織的にチームとしてサッカーをしていると思うし、その分ハードワークを求められるやり方だ。

 ゴトビ監督が目指すサッカーを選手が理解してきた現在の清水は、攻守両面のバランスがとれてきており、チームづくりがうまく進んでいるクラブのひとつだろう。

 去年もチームとしての狙いは同じだったと思うが、それがいまひとつうまくいっていなかった。それが今シーズンはスムーズにできてきていることで、結果につながっているのだと思う。

著者プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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