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サッカー日本代表の「攻撃的ウイングバック」は機能しているのか メキシコ相手に守備では奮闘もクロスは... (3ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi

【前半のサイドからのクロスはゼロ】

 そんななか、日本の3バックシステムは攻撃的に運用できたかと言えば、必ずしもそうとは言いきれない。確かに試合序盤では敵陣での前からの守備で効果は発揮したが、それだけでは両WBにアタッカーを配置する有効性を示したとは言い難い。

 また、前半15分以降、三笘も堂安も守備面で大きな役割を演じていたが、肝心の攻撃面では、敵陣で横幅をとって相手を広げるというこのシステムの重要な部分で満足できるような仕事はできなかった。

 むしろ気になるのは、やや優勢で試合を進められたはずの前半でも、日本はサイドからのクロスが1本も供給できなかった、という点だ。後半も、サイドからのクロスは4本しかなかった(右3本、左1本。そのうち味方につながったのは南野の決定機を生み出した久保の1本のみ)。

 繰り返しになるが、本来この3バックシステムを攻撃的に運用するためには、敵陣でのボール保持率をいかに高めるかがカギとなるが、その視点で見ると、アジア予選と違ってさすがにメキシコ相手になるとそれも難しかった、と見るのが妥当と言える。

 少なくとも、仮に両WBに本職のDFを配置したとしても、前からのプレスをチームとして機能させることはできる。それを考えると、確かに一定の手応えをつかめた試合内容だった一方で、攻撃面で課題が残された試合でもあった。

 実際、メキシコが中央を締めて守っていたこともあり、日本が敵陣で記録したくさびの縦パスも前半3本(そのうち2本は堂安が上田に対して斜めに出したくさび)、後半も終了間際の2本だけ。サイドを有効に使えないと、相手が集中する中央攻撃も機能しなくなるのは当然で、中央を締める相手を広げるためのサイド攻撃の必要性が、あらためて浮き彫りになったと言っていいだろう。

 もちろん、攻から守、守から攻への切り替えと、球際の攻防では十分にメキシコに対抗できていたし、むしろ上回っていた印象だった。また、両WBを務めるアタッカーの守備力もあらためて証明した。

 しかし、3バックシステムを攻撃的に運用できていたか、という大切なポイントが、その陰に隠れてしまった感は否めない。

 次のアメリカ戦は、メンバーが大幅に変わる可能性が高いのでその判断は難しいが、日本が同じ布陣で、両WBに誰を配置するかは、本番に向けたチーム強化を進める森保監督の狙いを見るうえでは、引き続き注目ポイントになりそうだ。

著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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