サッカー日本代表、豪州に1分け1敗 セルジオ越後「どういう根拠で『ワールドカップ優勝』と言えるのか」 (2ページ目)
【現実はベスト8だって大変だよ】
選手個々で見ても、よかったのは右サイドで起用された平河悠(ブリストル)くらい。積極的な仕掛けからチャンスをつくり、惜しいシュートもあった。昨夏にFC町田ゼルビアからブリストル(イングランド2部)に移籍してからはプレーを見る機会がほとんどなかったんだけど、成長しているなと感じた。今後もチャンスを与えてほしい。
一方、僕が注目していたボランチの藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)はもうひとつのデキだった。特に、前半は消えていた。パリ五輪のように、もっと攻撃に絡んでほしかったけど、ひさしぶりの代表戦出場ということで慎重になりすぎたのかもしれない。ボランチには遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)という絶対的なふたりがいるものの、いつまでも彼らに頼るわけにはいかないし、藤田にはがんばってもらわないと困るんだけどね。
この試合は森保一監督が多くの新戦力を試していたことから、"いつものメンバー"で戦っていれば結果は違っていたという意見もある。正直、僕もそうかもしれないなとは思った。
でも、ベストメンバーで臨んだ前回のホーム戦も結局、勝っていないので、そう言ったところで慰めにはならないね。いずれにしても、見ていてストレスのたまる試合で、皮肉を言えば、テレビの地上波中継がなくてよかったよ。
続くインドネシア戦は6-0の快勝。オーストラリア戦でたまったストレスを解消できた。内容的には10点以上取ってもおかしくなかった。なかでも、鎌田大地(クリスタル・パレス)や久保建英(レアル・ソシエダ)はさすがのプレーぶりで違いを見せた。やりたい放題だったね。
ただ、インドネシアに歯ごたえがなさすぎたのも確か。こういう試合は選手を評価するのが難しい。日本の選手はみんなうまく見えた。
森保監督と選手たちが「ワールドカップ優勝」を目指すと公言していることに対し、僕は以前から「焦る必要はない」「謙虚に挑戦者の気持ちで」と言ってきた。オーストラリア戦を見て、あらためてその思いを強くしたよ。
ちょうど今回の2連戦と同じタイミングで開催されていたヨーロッパのネーションズリーグの中継を見たんだけど、ベスト4に残ったポルトガル、スペイン、ドイツ、フランスはどこも強烈だった。日本は前回のカタールワールドカップでドイツとスペインに勝ったけど、両チームとも、当時とはまるで別のチーム。ほかにもオランダやイングランドもいいチームだし、南米には前回ワールドカップ優勝のアルゼンチンがいる。
そうした強豪がたくさんいるなか、昨年のアジアカップでベスト8敗退、最終予選でオーストラリア、サウジアラビアに勝ちきれなかった日本が、どういう根拠で「ワールドカップ優勝」と言えるのか。現実はベスト8だって大変だよ。オーストラリア戦の敗戦を、"いい警告"として受け止めてほしい。
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著者プロフィール
セルジオ越後 (せるじお・えちご)
サッカー評論家。1945年生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。17歳の時に名門コリンチャンスのテストに合格し、18歳の時にプロ契約を結び、MF、FWとして活躍した。「エラシコ」と呼ばれるフェイントを発案し、ブラジル代表の背番号10を背負った同僚のリベリーノに教えたことでも有名。1972年に日本リーグの藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)から誘いを受け、27歳で来日。1978年から日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、のべ60万人以上を指導した。H.C.日光アイスバックスのシニアディレクター。日本アンプティサッカー協会最高顧問。公式ホームページ【http://www.sergio-echigo.com】
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