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サッカー日本代表がたった5日で改善した理由 予選突破は「格下に大勝」の結果にすぎない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 5日前、オーストラリアに0-1で敗れた日本は、インドネシアに6-0で大勝した。森保一監督はよほどうれしかったのだろう。終わりよければすべてよしといわんばかりに、試合後の会見の席でいつにも増して饒舌だった。

 オーストラリア戦から立て直すことに成功した。最終戦をいい形で締めくくることができた......。先に会見に臨んだインドネシアのパトリック・クライファート監督が、日本を持ち上げたことも拍車をかけた。会見場は穏やかなムードに包まれた。

 だが、この予選全10試合を振り返えれば、インドネシア(4位)、バーレーン(5位)、中国(6位)とのホーム&アウェー戦が6戦全勝で得点27、失点1という結果だったのに対し、残るオーストラリア(2位)、サウジアラビア(3位)との4試合は1勝2分1敗(得点3、失点2)。大苦戦を強いられている。格下に大勝したことが世界最速で予選を突破した理由に他ならない。

 力が比較的接近したチームには苦戦。格下には楽勝。今回のオーストラリア戦、インドネシア戦の日本もそうした特徴を端的に表わしていた。まさに今予選を象徴するような2試合と言えた。

久保建英、鎌田大地、遠藤航が先発したインドネシア戦の日本代表 photo by Fujita Masato久保建英、鎌田大地、遠藤航が先発したインドネシア戦の日本代表 photo by Fujita Masatoこの記事に関連する写真を見る インドネシアはかつてより確かに強くなっている。選手の技量、特に球さばきは著しく向上した。だが依然として、全体的にヘナッとしている。オランダ生まれが増えたとはいえ身体が強くない。球際も強くない。かつてのヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、ことあるごとに日本人選手のプレーの強度不足を嘆いたが、今回、筆者の目にはインドネシアがそう見えた。

 オーストラリアは逆に身体が強い。大きくてしっかりしているので、体を張ったプレーができる。ボールさばきも及第点だ。先日の試合の終了間際、瀬古歩夢に競り勝ち、アジズ・ベヒッチの決勝弾を演出したライリー・マクグリーの折り返しなどは、インドネシアには真似できそうもない力強いプレーになる。

 日本とインドネシアはホーム&アウェー2試合の合計スコア10-0だ。しかし、それでもインドネシアはプレーオフに進出する。ワールドカップ本大会出場の可能性を残している。アジア予選のレベルの低さにあらためて驚愕する。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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