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サッカー日本代表の低調だったオーストラリア戦を分析 同じ失敗を繰り返したのはベンチワークがないからだ (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi

【オーストラリアの守備ブロックを崩せず】

 守るオーストラリア、攻める日本。前回対戦同様、今回の試合の構図をひと言で表すならそうなる。もちろん、このような構図になった最大の要因はオーストラリアのトニー・ポポヴィッチ監督の戦略によるところが大きい。

 前回対戦で守備を固めて勝ち点1を手にした成功体験もそのプランを選択した背景にあると考えられるが、それ以上に、勝ち点3差で追ってくるサウジアラビアとの直接対決を次の最終節に残していることが、そのゲームプランの選択理由と考えるのが妥当だ。

 日本戦で勝ち点1でも獲得できれば、第9節でサウジアラビアが勝利したとしても1ポイントリードした状態で最終節を迎えられる。最低でも、引き分け以上でW杯本大会出場が決定する状況でサウジアラビア戦を迎えたかったのだろう。

 したがって、ポポヴィッチ監督は就任後の第3節中国戦から貫く3-4-2-1をベースにしつつも、この試合ではそれを守備的に運用する5-4-1を採用。主軸に故障者が続出するなか、前回対戦とはスタメンが9人異なる編成して日本に挑んだ。

 対する日本の森保一監督が採用した布陣は、前回対戦と同じく基本布陣の3-4-2-1。ウイングバック(WB)には右に平河悠、左に俵積田晃太という、いずれも代表デビューのアタッカーふたりを配置した。その運用方法は異なるものの、オーストラリアも攻撃時は3-4-2-1になるので、基本的にはピッチ上の10人すべてがマッチアップする、ミラーゲームの構図だ。

 特徴的なのは、自陣では5-4-1で構えるオーストラリアが、ミドルゾーンでは5-2-2-1の陣形で日本のボランチ経由のビルドアップを封じにかかったことだ。日本の最終ラインがボールを保持した際、1トップと2シャドーが日本の3バックを監視すると、ダブルボランチ(13番、17番)は前に出て小さな五角形を形成。日本のダブルボランチを務めた藤田譲瑠チマと佐野海舟を5人で囲むように、「2-2-1」の陣形になって中央ルートにカギをかけた。

 前回対戦時と似た構図で試合が展開したわけだが、前回の時はボランチの一角を担った守田英正が最終ラインに下りることで日本は4-3-3の陣形を形成。「4」の両サイドがオーストラリアの「2-2-1」の両脇に生まれたスペースを使って前進ルートを確保した。

 今回の日本は、3バックを維持しながら、左シャドーを務めた鎌田大地が序盤から左サイドのスペースに下りることで守田と同じような役割を演じ、「2-2-1」のラインを突破。そこが日本のボールの出口となって、最終的に左WBの俵積田の仕掛けからクロスを試みるシーンを作り出していた。回数は少なかったが、藤田や佐野が最終ラインに落ちて4バック化するシーンも見受けられた。

 ただし、それらはチームとして構築した対策ではなかったのか、鎌田やダブルボランチの動きに継続性はなかった。逆に、15分を経過した頃には、オーストラリアの右WB(3番)が前に出て鎌田をマークする対応を開始。日本はそれによって生まれたズレから、28分に町田が鈴木唯人に縦パスを供給してシュートまで持ち込むシーンを作ったが、結局、前半における中央攻撃からのチャンスはその1回のみ。一方的にボールを支配したものの、全般的にはポポヴィッチ監督の策に日本がはめられた格好となった。

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