サッカー日本代表メンバーの大幅刷新を喜べない理由 新顔ばかりのチームでは今後のテストにならない (3ページ目)
【代表監督に必要な選手を漸次的に移行させる術】
そもそも代表チームにおけるテストとは、そのポジションに新顔がハマるかハマらないかを確認する機会である。個人能力の確認は、各所属クラブにおけるそれぞれのプレーを見て済んでいなくてはならない。あるポジションにいい感じで収まるか。森保監督の意向に沿ったプレーができるか。その点に目を凝らそうとすれば、フィールドプレーヤー10人中、常連は半分以上を占めている必要がある。
新顔が多数を占めた段階で、テストの意味は失われる。そして合格する確率は減る。新顔には不利になる。一見、門戸を広げたようでいて、実は新顔には厳しいテストである。
新顔7人を含む6割の入れ替えは、テストというより発掘の場だ。となると新たにテストをする機会が必要になる。常連組と新たにコンビネーションを確認する場を設ける必要が生まれる。つまり、新顔と常連組、それぞれを選ぶ人数のバランスに問題があるのだ。
代表監督に不可欠なのは、徐々に、まさにグラデーションを掛けるように漸次的に選手を移行させる術だ。毎回、少しずつ入れ替える。これができないと代表チームは循環しない。
なにより短期集中トーナメントの采配に影響が出る。森保監督は東京五輪の後、なぜ選手を入れ替えなかったのかと問われると、「日本はまだ先を見て戦うことができない」と答えた。日本ではなく森保監督は、と言い換えるべきであるが、この発想ではW杯の3戦目で手詰まりとなる。ベスト8の戦いは6試合目で、森保監督が口にする優勝は、8試合目の戦いに勝利した産物だ。ベストメンバーが何通りもあるサッカーでないと、そこに辿り着くことはできないのである。
メンバーを少しずつ入れ替えながら使える駒を増やしていく。W杯の成績はその数に比例する。森保監督の方法論では、メンバーがいくらよくても4試合目あたりが限界だろう。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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