若き日の青山敏弘がぶち当たったプロの壁 ミシャとの出会い、そして生涯忘れることのない悔しさ (3ページ目)
【ミシャが俺の判断をほめてくれた】
苦しみながらも、何かをつかみかけたルーキーイヤーを経て、迎えた勝負の2年目。しかし5月に行なわれたサテライトリーグの試合で、左ひざ前十字じん帯断裂の大ケガを負い、シーズンを棒に振ることとなった。
何もできない失意の2年間を過ごしていた青山だったが、プロ3年目に運命的な出会いが待ち受けていた。小野剛監督の辞任を受け、新たな監督として欧州からからやってきたのが、ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチである。革新的な攻撃スタイルを標榜するこの指揮官が、青山の才能を見出したのだ。
「最初から、ミシャのサッカーには合っていたと思います。運動量、3人目の動き、縦パス、全部ハマっていましたから。これをやれば、試合に出ることができる。その基準が初めてわかったというか。監督の求めるものにフィットしていた実感があったので、それが本当に楽しかったですね」
ペトロヴィッチ監督の初陣となった名古屋グランパス戦、青山は3-1-4-2の1ボランチに抜擢されてリーグデビューを果たし、3-2の勝利に貢献。以降、このポジションをモノにした。
実はデビュー戦の1週間前までは、サブ組で練習していたという。
「でも、自分のなかではいけると思っていたし、チャンスはあるなと。だって誰よりもミシャのサッカーを表現するパフォーマンスをしていたから。みんなには、もしかしたら出られるかもとしれないと言っていたけど、内心では絶対に出られる自信はありました(笑)」
ミシャの教えで最も印象に残っているのは、縦パスのタイミングだった。
「練習の時に横パスをワンタッチで縦に入れたら、(佐藤)寿人さんに『まだ準備できてないから、もうひとつタメてから出してくれ』って言われたんです。でもミシャは『アオの感覚でいいんだ。ヒサがアオのタイミングに合わせるんだ』って。
寿人さんはバリバリのエースで、俺はまだ試合に出たこともない。それなのに、俺の判断をほめてくれたんです。その時に初めて認められたというか、自分のプレーでいいんだって思うことができた。
横パスをダイレクトで縦に入れるというプレーは、ミシャと一緒に作っていったもの。逆にトラップしたら、怒られる。そうやって基準を明確に教えてくれたし、それで結果も出せた。自分の基準もそうだし、クラブの基準もそう。それを一気に上げてくれたから、やっぱり広島にとってミシャの存在は大きかったですね」
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