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森保ジャパンより心配なサッカーメディアの表現 遠藤航を「クローザー」と呼んでいいのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 見出しになると衝撃を与えるという点で言えば、代表選考から「落選」したという言い回しも同じだ。日本の実情に照らせば大袈裟すぎる表現だ。選から漏れたことに違いはないが、選挙ではない。

 欧州組のなかには、アジア予選のメンバーに招集されなかったことを内心、喜んでいる選手がいないとも限らない。アジア予選のレベルは低い。張り合いのある代表戦は4年間で数えるほどだ。にもかかわらず、毎度ベストメンバーを招集する森保一監督のやり方を、全面的に肯定する言い回しでもある。日本が特殊な領域に置かれていることを忘れてはならない。「落選」という言葉がしっくりくるのは、W杯本大会のメンバー発表ぐらいだろう。

 取り巻く環境がここ数年で大きく変化した日本サッカーに、メディアは対応できているのか。筆者には、森保ジャパンよりむしろ、報じる側のほうが心配に見える。日本のサッカーの偏差値が上げるか否かはその姿勢にかかっている。森保式3バックを超攻撃的と言って持ち上げている限り、大きな進歩は望めない。遠藤をクローザーと呼んで讃えている限り、サッカー先進国の仲間入りをすることはできない。筆者はそう思う。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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