パリオリンピックで旗手怜央が思い出す3年前の東京オリンピック 今も心に残っている吉田麻也の言葉がある (3ページ目)
【オリンピアンとメダリストは大きく違う】
僕自身が、選手を選ぶ立場になって考えてみると、自ずと、どうすればいいかが見えてきた。
試合に出られずとも、意欲を持って毎日の練習に取り組んでいる選手を見れば、起用したくなるし、そうした選手のほうが試合の流れや状況を変えてくれるのではないかという期待も高まる。僕は、そうした存在になろうと努めた結果、チャンスを増やすことができたのだ。
東京五輪で得た教訓や経験は、A代表になって初めて自分が参加できた大会、AFCアジアカップでも生かすことができた。
ただ、4位に終わった東京五輪を終えて、心に残ったのは、キャプテンを務めていた吉田麻也さんの言葉だ。麻也さんは、メキシコとの3位決定戦を前に、みんなにこう話してくれた。
「オリンピアンとメダリストは大きく違う。だからこそ、メダリストになろう」
麻也さん自身もロンドン五輪で4位に終わり、メダリストになれなかった苦い経験が残っていると伝えてくれた。オリンピックに出場した人はたくさんいるが、そのなかでもメダリストは違う。メダリストは記録にも残るし、当然、人々の記憶にも生き続ける。
負けた試合で選手が評価されることは少ないように、勝つことでチームは評価され、そして選手も評価されていく。4位で終わった東京五輪では、そのオリンピアンとメダリストの違いをまざまざと痛感した。
選手はみな、自分が試合に出たい、自分がプレーしたいという思いを持っているだろう。だが、それが第一になってしまって、チームのことを度外視してしまうと、チームメートからも、指導者からも評価されにくくなる。
チームのことを考えたうえで、そのために今の自分に何ができるのかを逆算して、自分の行動や姿勢に変えていく。それが、結果的にチームのためになり、自分のためになる。
オリンピアンではなくメダリストになるためには、チーム全員の力が必要なように、チームのためを思った一人ひとりの行動や姿勢が、結果に結びつくと思っている。
著者プロフィール
旗手怜央 (はたて・れお)
1997年11月21日生まれ。三重県鈴鹿市出身。静岡学園高校、順天堂大学を経て、2020年に川崎フロンターレ入り。FWから中盤、サイドバックも務めるなど幅広い活躍でチームのリーグ2連覇に貢献。2021年シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。またU-24日本代表として東京オリンピックにも出場。2022年3月のカタールW杯アジア最終予選ベトナム戦で、A代表デビューも果たした。2022年1月より、活躍の場をスコットランドのセルティックに移して奮闘中。
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