谷口彰悟が先輩・小林悠を「かなり面倒くさい」と言った理由 キャプテンとして「饒舌じゃない。でも魂が込められていた」 (2ページ目)
【最後まで「死なない選手」だった】
悠さんは、DFの逆を取る動きがとにかく秀逸だった。マークに行くこちらが食いつきすぎると、そのタイミングでサラッと逆を取られてしまう。練習ではやはり悠さんを相手に守る機会もあり、その駆け引きには常に頭を使わされた印象が残っている。
DFの背後を突く動き、DFとの駆け引きを制する能力は本当にトップレベルだったが、それ以上に対戦相手として見た時に嫌だったのは、「俺が点を取る」というメンタル的な強さだった。ゴールへの姿勢とでも言えばいいのか、欲とでも言えばいいのか。あの気迫は、本当にチームメイトでよかったと何度思ったことか。
正直、練習相手としても、すごく、いや、かなり面倒くさかった(笑)。
悠さんは、練習でも絶対に手を抜かない人だった。この表現が正しいかどうかはわからないが、試合中も練習中も、最後まで「死なない選手」だった。
たとえばだが、CBは試合中に相手があきらめたことや、スイッチが切れたのがわかる時がある。激しい競り合い、しのぎ合いを続けた結果、相手の心が折れた瞬間がわかるだけに、CBはFWをそういう精神状況に追い込もうとする。
しかし、悠さんの場合は、こちらがうまくボールを奪ったり、うまく守りきったりすると、その状況に闘志を燃やしてくるのがわかる。
どんなに激しくいっても、どんなにうまく対応しても、心が折れた様子はなく、止めれば止めるほどに力を発揮してくるストライカーだった。10本の練習で9本を止めたとしても、最後の1本でゴールを狙っている選手だった。小林悠とは、それくらい最後の最後まで、あきらめない人だった。
だから練習で、こちらがガツンと厳しくいこうものならば、何倍もの力で跳ね返ってくるような感覚だった。「死なない選手」と表現したのは、そんな理由からだ。
練習では守るこちらも高い集中力を問われるため、悠さんとのマッチアップは楽しく、一緒に練習したその日々が、CBとしての力を引き上げてくれたように感じている。また、練習中であっても、最後の最後まで全力を尽くすその姿勢が、当時の川崎フロンターレを戦える集団へと押し上げてくれていたようにも思う。
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