サッカー日本代表戦開催の広島新スタジアムのすばらしさ 首都圏での球技場新設はまだ?

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

新連載第1回 
サッカー観戦7000試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」

なんと現場観戦7000試合を超えるサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。第1回は6月11日に日本代表戦が開催される、広島とスタジアムについて。

【広島に新スタジアム効果】

 2026年W杯アジア2次予選の最終シリア戦は、広島で行なわれることになった。

 選手としてサンフレッチェ広島で活躍し、監督としても同チームでJ1リーグ3度優勝の偉業を達成した森保一監督だが、2018年に日本代表監督に就任して以来、日本代表を率いて広島で戦うのはこれが初めてだ。

日本代表戦が開催されるエディオンピースウイング広島。西日本では球技専用スタジアムが増えている photo by Getty Images日本代表戦が開催されるエディオンピースウイング広島。西日本では球技専用スタジアムが増えている photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 日本代表戦が久しぶりに広島で開催されることになったのは、新スタジアム(エディオンピースウイング広島)完成がきっかけだった。

 今年2月に完成した新スタジアムは、2万8347人収容の球技専用スタジアムだ。同23日のJリーグ開幕戦(対浦和レッズ)には2万7545人が集まり、その後、すべてのJ1リーグ戦で2万5000人以上が来場している。昨年のJリーグでの広島の平均入場者数は1万6128人だったから、約60%の増加ということになる。

"新スタジアム効果"はJリーグだけではない。女子サッカーのWEリーグでも新スタジアム最初の試合となったサンフレッチェ広島レジーナ対アルビレックス新潟レディースの試合には4619人が入場。スタジアム完成前の今季平均入場者数は約1400人だったが、完成後は約3700人になっている。

「建設費約250億円」と言われるが、これだけの観客動員ができれば十分に元が取れる投資だったのではないだろうか。

 新スタジアムは広島市が事業主体となって整備されたが、最初からJリーグでの使用を前提として設計され、指定管理者としてもサンフレッチェ広島が選ばれている。それだけに、サッカーを観戦するには最高の施設となった。

 平和記念公園や原爆ドームからも近く、アクセスは抜群。スタンドからピッチまでは8メートルという近さだし、スタンド全面に屋根が付くなど観戦環境も大幅に改善された。

 これに対して、昨年まで広島がホームとして使用していたエディオンスタジアム広島(広島ビッグアーチ)は陸上競技場だったため、スタンドからピッチまでが遠かったし、メインスタンドの一部を除いて屋根もなく、また、広島市内からはアストラムラインで30分以上とアクセスもよくなかった。そして、1992年の完成からすでに30年以上が経過して施設自体の老朽化も進んでいた。

 だから、広島にとっては待ちに待った新スタジアムの完成だったのだ。

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著者プロフィール

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

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