川澄奈穂美、現役女子選手初のJFA理事が語る「プロとは何か」 女子サッカーに見る日本とアメリカの格差とは? (4ページ目)
【「女子サッカーのために」という思い】
アルビことアルビレックス新潟レディースでは、主力として稼働している。38歳の経験者は「足を引きずりながら、どうにかやっています」と笑うが、キャプテンとしてチームを力強く牽引している。
チームは4月29日時点で、3位につけている。WEリーグ1年目は11チーム中8位、2年目は10位に終わったアルビは、過去最高のシーズンを過ごしている。
「8月に合流したとき、すごくいいチームに入れたと感じました。日々の練習から課題に向き合って、ひとつずつ改善していって、ひとりひとりが持っているポテンシャルをピッチ上で表現できているから、の成績とか雰囲気が作り出せているのかなと思います」
川澄奈穂美は38歳の今もアルビの主力として活躍 photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る チームの雰囲気については、同級生の存在が大きいという。小学生年代から知る上尾野辺めぐみだ。
「2006年からずっとアルビでプレーしていて、在籍18年目です。男子でもなかなかいないような経歴で、間違いなくクラブのレジェンドじゃないですか。
でも、とっつきにくいとか扱いにくいとかがまったくなくて、若い子からいじられている。そういう扱いを周りにさせるのも才能だと思いますし、そこでいい味を出している彼女がいるのは、このチームの雰囲気のよさにつながっています」
2011年の女子ワールドカップでともに世界一を勝ち取ったなでしこジャパンのメンバーは、川澄、上尾野辺を含めて12人が現役を続けている。同じ思いを、胸に秘めて。
「みんなで集まって話しているわけではないですけど、女子サッカーのために、という思いはすごく強く持っています。それは、みんなの立ち居振る舞いを見ていればわかります。伝えたいと言ったらおこがましいですけれど、何とかピッチに立っているうちに、ね」
川澄の練習への取り組み方は、試合中のあきらめない姿勢は、WEリーグで戦う選手たちに「プロとは何か」を問いかける。彼女が刻む一歩一歩が、日本の女子サッカーの道しるべとなっていくのだ。
(後編につづく)
◆川澄奈穂美・後編>>理事抜擢の理由は「私は思ったことを言っちゃうタイプ」だから
【profile】
川澄奈穂美(かわすみ・なほみ)
1985年9月23日生まれ、神奈川県大和市出身。地元の林間SCレモンズ→大和シルフィールドを経て日本体育大学に進学し、卒業後の2008年にINAC神戸レオネッサに加入。2011年にはリーグMVPと得点王に輝き、2013年も2度目のMVPを受賞する。2016年にNWSLのシアトル・レインFCに完全移籍し、スカイ・ブルーFC(→NJ/NYゴッサムFC)でもプレーしたのち、2023年7月からアルビレックス新潟レディースに所属。2011年FIFA女子W杯優勝メンバー。日本代表90試合20得点。ポジション=FW。身長157cm、体重51kg。
著者プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)
【写真】女子W杯優勝メンバー川澄奈穂美「昔と今」フォトギャラリー
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