堂安律「後半はホントに情けないゲーム」 イラン戦、攻撃は「打開策がまったく見えなかった」守備は「ズルズル下がってしまって...」
それは、責任感の表われだったのかもしれない。
試合に出場した選手では誰よりも早く、堂安律はミックスゾーンに姿を見せた。待ち構える記者の前に立つと、厳しい表情で口を開く。
「前回のアジアカップから2021年の東京オリンピック、2022年のワールドカップ、今回のアジアカップと、代表で何ひとつ成し遂げきれていない自分の不甲斐なさを、今、感じています」
試合後、ひとりベンチに座って考え込む堂安律 photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る フル代表で初の国際大会となった2019年のアジアカップでは、背番号21を与えられた。2022年のカタールワールドカップでは8番を着けた。
昨年6月からは、背番号10を託されている。今大会でもエースナンバーを背負った。カタールワールドカップ後の立場の変化に伴って、チームの勝利に対する責任感はこれまで以上に大きくなっていると言っていい。
グループステージ第1戦と第2戦は途中出場だったが、インドネシアとの第3戦でスタメンに選ばれると、世代別代表からともにプレーする久保建英、自在に立ち位置を取るサイドバックの毎熊晟矢とのトライアングルで、右サイドから攻撃を活性化する。毎熊が代表デビューを飾った昨年9月から好印象を植えつけている3人のコンビネーションは、日本のストロングポイントとなっていった。
堂安自身はラウンド16のバーレーン戦で、大会初ゴールをマークした。デュエルに激しく挑み、プレスバックにも献身的な姿勢はチームを勢いに乗せ、8強入りの立役者となった。
FIFAランキングの大陸上位2チームの激突となった準々決勝のイラン戦でも、堂安は先発に名を連ねた。日本は28分に守田英正のゴールで先制すると、1-0でハーフタイムを迎えた。ところが、後半は次第にペースを握られていく。
「前半は間違いなく自分たちのペースでやれていたと思うんですけど、後半は相手のパワーに完全に支配されていた。ほとんどの選手がヨーロッパでやっていて、あのパワーに慣れているはずなのに、跳ね返せない。
それが何からくるのかはわからないですけど、特に崩される感じはないけど押し込まれているということで、たぶん観ていた人はやられそうだなっていう雰囲気はあったと思う。やっている自分たちもそれは感じていたなかで、ピッチのなかで声をかけきれなかった」
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プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)