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サッカー日本代表はイラクに敗れて当然 前半データ上でも圧倒されて監督の交代策も後手 (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【交代策も後手に回っていた】

 敗因につながったもうひとつのポイントは、やはり日本のベンチワークだろう。

 まず、森保監督はハーフタイムに2つの変更を行なった。ひとつは、18番対策としてCB谷口に代えて冨安健洋を投入。肝心の18番は、負傷により後半開始から10番に代わったのでその効果は測れないが、少なくとも修正点としては妥当だった。

 もうひとつは、2列目を入れ替えて右に久保、1トップ下に南野、左に伊東を配置。スタメン編成時のミスキャストは反省点だが、前半で露呈した攻撃の問題を考えれば、交代カードを切らずに修正するという点で理にかなっていた。

 これで、左は伊東、右は久保が幅をとり、浅野の右脇に南野、ボランチの守田も左脇に加わって4-1-4-1を形成。5つのレーンをバランス良く使える設定になったことにより敵陣でボールを握る時間帯が増え、前半に3本しかなかった中央バイタルエリアへのくさびの縦パスも、後半は6本に倍増。クロスも前半の8本から後半は13本に増加するなど、ここまでの采配に大きな問題はなかった。

 しかし、流れが日本に傾き始めた戦況を見たイラクのベンチも動いた。日本が浅野と久保に代え上田綺世、堂安律を入れた4分後、ヘスス・カサス監督は4枚目のカードとしてDFの6番(アリ・アドナン)を投入。前線で5人がバランス良くポジションをとるようになった日本に対し、5-4-1で対抗することで逃げきり作戦に拍車がかかった。

 こうなると、敵陣に相手を押し込んでもゴールをこじ開けるハードルは高くなる。しかも、森保監督は後半74分、伊東に代えて前田大然を左ウイングに、守田に代えて旗手怜央を中盤に起用。より4-1-4-1を明確にするという狙いが見て取れたが、相手が引いて守る状況で前田を起用したことで、左サイドの攻撃力を低下させる現象を生み出してしまった。

 ゴールまでの筋道に沿って、狙い通りの選手交替をタイミング良く行なったヘスス・カサス監督と比べると、森保監督の采配は後手に回ったと言わざるを得ない。同時に、試合中の選手の工夫に委ねる指導スタイルのマイナス部分が露呈した試合とも言えた。

 おそらくアジアカップでは、今後も日本がボールを保持する試合が続くだろう。その中で、日本が昨年に見せたようなハイパフォーマンを発揮できるよう、大会中に修正ができるのか。このイラク戦で決定機を一度も作れなかったことを考えると、ここからのバウンスバックはそう簡単ではないと思われる。

著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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