サッカー日本代表はイラクに敗れて当然 前半データ上でも圧倒されて監督の交代策も後手
サッカー日本代表のアジアカップ第2戦。イラク戦は前戦に続き2失点を喫し敗戦。攻撃面ではほとんどいいところを出せない完敗だった。何が悪かったのか。データや試合の流れを追ってみる。
【森保ジャパンの現状を明確にした一戦】
イラクに勝って、グループ3戦目のインドネシア戦でスタメンを大幅に入れ替える。おそらくそれが、優勝を目指す森保一監督の青写真だった。ところが、そのイラク戦でまさかの敗戦。勝ち点を逃したことで、早くもその筋書きが狂い始めている。
サッカー日本代表がイラクに完敗。圧倒された前半、選手交代も後手に回った photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 選手個々の所属クラブや実績、FIFAランキングの差(日本=17位、イラク=63位)などを考えても、日本にとってイラクは勝って当然の相手だったはず。
しかし蓋を開けてみれば、前半に2点をリードされ、後半アディショナルタイムに1点を返すのが精一杯。カタールW杯でドイツやスペインが日本にジャイアントキリングを起こされたように、今回は日本がイラクに番狂わせを演じられてしまった。
サッカーは、初戦のベトナム戦がそうだったように、往々にして個の力が最後にものを言う。しかしその一方で、個の力だけでは勝ち続けられないチームスポーツでもある。今回のイラク戦は、まさにサッカーの競技特性を再認識させてくれたと同時に、森保ジャパンの現状を明確にしてくれた一戦だった。
たとえば試合後のスタッツを見てみると、ボール支配率は勝者イラクの27.5%に対し、敗者の日本は72.5%と圧倒している。シュート数も、2ゴールのイラクが8本(枠内3本)だったのに対し、日本はシュート15本(枠内2本)。数字的には、日本がイラクを確実に上回っていた。
ただし、必ずしもスタッツがそのまま結果に結びつかないことも、サッカーの特性のひとつだ。とりわけカタールW杯後の第2次森保ジャパンは、ボール支配率が低い試合で快勝し、高い試合で苦戦する傾向がある。この特徴については昨年11月のミャンマー戦の分析でも触れたが、今回のイラク戦もその典型的な例と言っていいだろう。
では、実際に今回のイラク戦ではどんな現象が見られたのか。表面的な数字だけではなく、試合の中身を具体的に掘り下げて敗因を探ってみる。
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著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)